日本と米国の著作権法の違い
アメリカでは公共の福祉が優先され、どんな事業であっても、国民の大半がその恩恵を受けるなら認めるという「フェア・ユース」の社会である。アメリカの著作権法では、次の4要素を考慮してフェアユースにあたると判定されれば、著作権者の許諾なしに使用できる。
①使用の目的および性質(営利目的かどうかなど)
②著作物の性質
③著作物の使用された部分の量、実質性
④著作物の潜在的市場または価値に対する使用の影響
一方、日本にはフェアユースという迂回路がなく、個別の権利制限規定を追加するという対応で、後れをとってきた。日本は、検索エンジンや音楽クラウドサービス、電子図書館構想でアメリカと同時、もしくは先んじていたにもかかわらず、法制度の壁に阻まれ、結果として果実を得るのはアメリカ企業というパターンが続いている。権利者を保護する事しか考えていない著作権法と、それを厳格に適用する裁判所は、日本企業のイノベーションを阻んできたのだ。
日本でも、2000年代後半から日本版フェアユース規定の導入が叫ばれはじめた。しかし、わが国の著作権法をコントロールしている文化審議会著作権分科会の委員会では、委員長は法学者、委員も学者は全員法学者であり、学者以外は弁護士か権利者団体の役員で占められている。中に経済学者は1人も加わっていない。権利者の利益を代表する委員が過半数を占める審議会により、日本版フェアユースの導入はトーンダウンした。
フェアユース規定を導入せよ
日本では、インターネットという1つの技術革新に著作権法が適応できていない。その理由は、複製を前提とするインターネットで複製禁止の原則を貫き通そうとしているところにある。
インターネットの世界では、イノベーションに好意的な著作権法のもとでビジネスを立ち上げるアメリカ企業が、日本市場を制覇し、植民地化している。フェアユースは著作権産業に悪影響を及ぼす事なく、私的複製技術産業に高成長をもたらすと結論ふけられている。日本が、今後、成長戦略で経済を成長させるには、アメリカやシンガポールの例を参考にすべきである。フェアユース規定がないと、ネットビジネスでは戦う前から勝負がついているようなものだ。
初音ミクや動画パロディのように、ユーザーの体験や創作であるUGC(ユーザー作成コンテンツ)は重要なコンテンツであり、大きな可能性がある。今こそ、ロビーイング2.0によって政治家を動かし、著作権強化の動きに歯止めをかける事が大切である。