人気デザイナーが、商品をデザインするための思考法を公開。新しい発想を生むために気をつけるべきポイントが、事例とともに紹介されています。新しい商品やサービスを考える上でも、ヒントとなる1冊。
■デザイナーの役割とは
デザイナーの仕事は「奇抜な形を作る」事でも、何かを「カッコよく見せる」事でもない。デザインとは問題解決のための「新しい道」を見つける作業である。
「コップの中の水を捨てて欲しい」と言われた時に、コップを傾ける事は誰にでも思い付くが、例えば、コップを温めて水を蒸発させてもいい。コップの中に紐を垂らして毛細管現象で水を吸い出してもいいし、無重力にして水を浮遊させてもいいし、見えないくらい小さな穴をコップの底に開けておいて、しばらく水が漏れなくなっていてもいい。水を張った水槽の中にコップごと入れたらコップ内の水の存在を感じなくなるかもしれない。
こういった「新しい道」を見つける事によって、クライアントに価値を提供するのがデザイナーの役割である。既成概念にとらわれる事なく、自由でありながら、但し「コップを空っぽにする」という目的は必ず達成しなくてはならない。
■nendoの思考法
⑦とにかく「集める」
細部と全体を結び、プロダクトと空間を結ぶ事による一体的な居心地の良さを生むのが、ある特定のモノを徹底して集積しながら全体を作る手法だ。まず、とにかく「集める」のだ。
⑧「休み時間」に休ませない
使われていない状態を観察すること、すなわちモノの「休み時間」を考える作業も、nendoのデザインに欠かせない手法となっている。モノ作りをする際、デザイナーはそのモノが「使用中」の状態を強く意識しがちだが、実は使われていない時間の方が長かったりする。モノがあまり人々の役に立っていない状態を再考してあげる事で、新たな展開が見えてくる。
⑨「他人丼」を見つける
nendoのデザインにも、普段はつながっていないと思われるものを共通項によってつなげる手法がある。それを「他人丼」と呼ぶ。頭の中では全く別のフォルダー内に格納されていたデータ同士が突然、「リンクが張られた」状態になる事で物事の見え方が一変する。この時、両者が離れていれば離れているほどインパクトは大きなものとなる。高低差による「落差」が生まれるからである。
⑩そこにあるものを「使いまわす」
制約があるからこそ発想が飛躍する事がある。適した要素を適した形で、無理なく活用する。既に存在するものをあてはめ、解決する。美術の世界ではデッサンが狂っていないか、描いたものを逆さにしたり裏から見たりするが、私達は普段そうした事を意識して生活していない。何かを「使いまわす」事は、新たな視点を提供する事なのである。
著者 佐藤オオキ
1977年生まれ。デザインオフィスnendo代表 デザイナー。2002年、デザインオフィスnendo設立。Newsweek誌「世界が尊敬する日本人100人」(2006年)、「世界が注目する日本の中小企業100社」(2007年)に選ばれる。 主な受賞にWallpaper誌(英)、および、Elle Deco International Design Award「デザイナーオブザイヤー」(2012年)があり、代表的な作品は、ニューヨーク近代美術館(米)、ビクトリア&アルバート博物館(英)、ポンピドゥー・センター(仏)など世界の主要な美術館に収蔵されている。 2012年から早稲田大学非常勤講師。
著者 川上典李子デザインジャーナリスト デザイン誌「AXIS」編集部(1986年~1994年)を経て1994年独立。1994年~1996年、ドムスアカデミーリサーチセンターの日伊プロジェクトにエディトリアルディレクターとして参加。 現在はデザイン誌や新聞等に執筆、デザイナーの作品集への寄稿も多数。2007年より21_21 DESIGN SIGHTアソシエイト・ディレクターとしてデザイン展の企画にも関わる。
日経ビジネス |
帯 ファッションデザイナー 三宅 一生 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに~佐藤オオキ | p.2 | 1分 | |
第1章 nendoの思考法 | p.7 | 83分 | |
第2章 nendoの行動術 | p.189 | 11分 | |
おわりに~川上典李子 | p.214 | 1分 |
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