統計学の初歩をわかりやすく紹介している本です。統計学ブームのさきがけとなったベストセラー。
■データを見る
データがついている新聞、雑誌の記事を読む時、データを先に見る。なぜなら、本文はデータのうち、著者が強調したい部分を切り出して書かれている事が多いからである。データを先に見てから本文を読むと、記事に書かれていない事まで見えてくる事がある。
「データを先に見る」というのは、自分で何かを調べる際にも重要な事である。人を説得するためにデータを揃える必要が出てくる事がよくある。この時、自分の考えを補強するデータが見つかったからといって、それが事実だと思うのは危険である。試しに、反対の意見を補強するデータを検索すると出てくるはずである。こういう時には、元になっているデータを見ること。誰かが解釈したデータではなく、解釈がなされる前のものを見るのである。大事なことは3つ。
①データを先に見る
②誰かが解釈する前のデータを見る
③自分の仮説に反するデータも集める
■陥りがちな間違い
データを見る際に陥りがちな間違いは、一部だけを見て判断を下してしまう事である。「違った方向から考える」事の重要性を痛感させる論文に、サーチンガーという研究者グループが書いたものがある。
地球温暖化対策の切り札として、トウモロコシなどからエタノールを取り出して燃料にするなどの「バイオ燃料」がある。トウモロコシなどの植物は、大気中から二酸化炭素を吸収して酸素を放出するため、温室効果は起きない。ガソリンの場合は、このような利点はないので、バイオ燃料の割合を増やそうと考えるのは自然な事である。
ここで、サーチンガー論文は指摘する。エネルギーとしての需要が大きく、トウモロコシが高く売れるとなれば、農家は他の用途に利用されていた農地や、森林地帯をトウモロコシ畑に変えようとする。土地や森林は、長い期間をかけて、大気中の炭素を取り込んでおり、これをトウモロコシ畑に転用したら、取り込んだ炭素が大気中にばら撒かれてしまう事になる。サーチンガーの計算結果では、コーンエタノールは、ガソリンの約2倍の温室効果ガスを放出する事になる。何事も一面的な判断は危険である。
著者 神永 正博
1967年生まれ。東北学院大学工学部教授 日立製作所中央研究所研究員等を経て、現職。2010年度は数理科学研究所客員研究員として南インドに滞在。
404 Blog Not Found 小飼 弾 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.3 | 3分 | |
第1章 基礎編 データを見る | p.19 | 56分 | |
第2章 中級編 データを読む | p.117 | 53分 | |
第3章 上級編 データを利用する | p.209 | 24分 |
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