ヒットの法則
コースの成功基準は「平均乗車率を超えたかどうか」。バスの定員は44名で、平均乗車率は約57%だから、25名を上回れば一応「成功」となる。
①「現場百遍」で企画のヒントを探す
はとバスではお客さまの「生の声」に耳を傾けるべく。企画を担当したプランナーが、コース初日に添乗するのが慣例となっている。お客さまがコースのどこに満足し、どこに不満を感じているかが、手にとるようにわかるからだ。そこには企画のヒントがぎっしり詰まっている。
②まずはお客さまターゲットを明確にする
「このコースは、誰に買ってもらうの?」は、企画会議で必ず聞く質問の1つ。想定しているお客さまはどんな人たちで、日頃からどんな行動特性を持っているのか。そのビジョンが明確でなければ、商品としては成功しない。万人向けの企画は、結局、誰の心にも響かない。コースが終わった時、お客さまの顔に浮かんでいるのはどんな表情か。そこまで具体的に想像できなければ、企画が不発に終わる可能性は高い。
③客層によって、求めるサービスは違う
地方からのお客さまで、「はとバスに乗るために来た」という方はほとんどいない。ディズニーランド観光や出張、別の目的で上京したついでに、はとバスを利用される方が大半だ。こうしたお客さまをはとバスに呼び込むためには、東京滞在中の空き時間を有効に使えるよう、コースの時間や料金を設定する必要がある。一方で、首都圏のお客さまは、定番の観光地に行くために、わざわざはとバスに乗る事はしない。こうしたお客さまを呼び込むためには、はとバスならではのプレミアム感を前面に打ち出す。
④お客さまの「ワクワク感」をとことん追求する
バスツアーの企画がヒットするかどうかは、「非日常性」が体験できるかどうかにかかっている。高級ホテルのダイニングで食事をする事も非日常なら、動物園にパンダを見に行くのも非日常。だが、数ある選択肢の中から、はとバスを選んで頂くためには、もっと鮮やかな体験が必要だ。その意味で、最も成功した企画の1つに『話題の川崎工場夜景スポット』がある。
⑤「個人では体験できない」非日常性の提供
観光バス会社の存在意義は、「個人ではできない体験を提供する」こと。例えば、個人では見学させてくれないが、バスツアーなら受け入れるという施設は意外に多い。バスツアーの価値は、利便性や価格だけで決まるわけではない。
⑥人は、自分の知らないものは買わない
人は、自分が知らないところには行かない。その場所について何も知識がなければ、そもそも「行くべき価値があるかどうか」がわからないからである。こうした考えに基づいて、はとバスでは、テーマ性の強い企画以外は、定番の観光名所をはずさないようにしている。