文系ビジネスパーソン向けに書かれた簡単なデータ分析の考え方。身近にある統計データを参考にしながら、その数字の読み方のポイントを解説しています。
■ケータイ会社が学生のいる家族を優遇するのはなぜか?
以前から顧客の消費行動についてのデータをうまく活用している企業の代表格が、携帯電話会社。近年は「学生のいる家族」に丸ごと契約してもらおうとして、料金制度の上で大幅に優遇し、春先などに大量にCMを流している。これがデータに裏付けられた戦略である事は、総務省の経済統計からわかる。携帯電話・PHS使用料は、中学・高校・大学・専修学校生がいると,世帯員1人当たりでみて相当に高くなる。在学者のいない世帯と比べて、中学生がいる世帯は約2割高く、高校生がいる世帯は約5割高い。大学・専修学校生のいる世帯は6割以上高い支出となっている。携帯電話会社が優遇を行ってでも、学生のいる家族に丸ごと契約してもらいたい理由がデータをみればすぐにわかる。
しかし、役に立つ特徴を新しく教えてくれるデータは、そう簡単には見つからない。データの量が増えるからといって、自動的に新しい有益な発見があるわけではなく、誰かが見つける努力をする必要がある。
データを調べて気づいた内容が正しい事もあれば、間違っている事もある。データをたくさん調べたのに、何も気づきが得られない時もある。しかし、仕事の中で何か疑問に感じたら、まずは基本データの確認をしてみる習慣を身につけると、データ読解・活用能力は着実に高まる。
シンプルであるがゆえに説得力があるデータを都合よくみつけられるようになりたいなら、たくさんのデータを読む経験を積む事である。
著者 吉本 佳生
1963年生まれ。経済学者 住友銀行勤務を経て、名古屋市立大学大学院経済学研究科満期退学。広島市立大学と南山大学での専任教員を経て、2009年4月からフリーランスになり、著述業を中心に活動。専門は金融経済論、生活経済学、国際金融論など。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに ケータイ会社が学生のいる家族を優遇するのはなぜか? | p.3 | 7分 | |
第1講 テレビと旅行に関するインターネット調査が役立たずなのはなぜか? | p.23 | 13分 | |
第2講 米よりパンのほうがインフレ予想に影響が大きいのはなぜか? | p.45 | 18分 | |
第3講 高学歴のほうが若者の失業率は高いのか? | p.75 | 16分 | |
第4講 就職難なのに、大学生の就職率が90%超と高いのはなぜか? | p.103 | 21分 | |
第5講 多機能な家電のほうが値下がりしやすいのはなぜか? | p.139 | 26分 | |
第6講 分散投資のために特定業種の株を買うべきなのはなぜか? | p.183 | 23分 | |
第7講 日本の格差は本当に拡大しているのか? | p.223 | 16分 | |
第8講 若者の免許離れは本当に起きているのか? | p.251 | 13分 | |
おわりに 数字でコミュニケーションを! | p.273 | 3分 |