N3マーケティングとは
「人や社会の、こうあったらいいな」を理解する事には時間がかからない。まず3人の顧客を本当に理解しよう。これが「N3マーケティング」である。N数の多いアンケート調査も、統計的方法論も、ビッグデータも後回し。まず、自分たちの目でN3。これを3時間〜3日間以内に行う。
私達は誰も本当のところどういう理由で、どういう購買行動を取っているのか頭や表層意識では理解できていない。従って、インタビューやアンケートをいくら行っても、正確な情報は取れない。人の本当の購買行動を理解するには、人が正確に答える事だけを頼りにするしかない。人は2つの購買候補があった場合に、価格も含めて考えて「こちらが良い」と選択する事はできる。そこで、この事に着目して、製品コンセプト、ブランド、価格、このような様々な要素を勘案して作成した架空の製品を多数作る。それらの製品をランダムに示しながら、「どちらをより選考するか」だけを尋ねていく。
コーヒーショップの場合なら、コーヒーショップのコンセプト、店のブランド、広さ、雰囲気、窓の外の風景、音楽、価格、軽食の有無などの要素から架空の多数のショップを作り出す。そして、その架空のたくさんの商品やコーヒーショップのイメージを示しながら、「どちらがより好きですか、買いたいですか」と判断してもらい、その結果から、どの要素がどれだけの重みを持っているかを解析するのだ。
市場について知りたい時、何よりも優先されるのは「市場の反応の立体感」のようなものである。立体感とは「何に対して」「何割くらいの顧客が」「どれくらいのプレミアム価値を認めるか」、そんな感覚である。これが理解できると、重要な意思決定が、瞬時にできる。事業の成否は顧客の反応で瞬時に決まる。それならば、事業判断の前は,自分達の頭の中で顧客の反応を想定するのではなく、N3で顧客の心の中に飛び込むのである。実地実戦の経営判断の事例には、初歩的なエラーが多い。その初歩的なエラーには、N3で顧客の反応を虚心坦懐に見ていけば、スピーディに気づく事ができる。
思考のクセを打ち破る
私達は「事実を虚心坦懐に見よう」としても、無意識に自分の価値観や判断をくっつけがちである。頭は始終、解釈や判断という作業を行っているのだ。さらに「気づける」ところまで行ったとしても、重大な問題が待ち構えている。それは「気づきかけた事を無視する」現象である。
人にも組織にも思考にはクセがあり、意識の向け方に偏りがある。だから、N3で初歩的なエラーに気づき、未来につながる新たな方向を見定め、その作業とともに、思考のうずのようなものを打ち破っていく。