戦略コンサルタントの著者が、独自のマーケティング手法を紹介。顧客の深層心理を読むことが、戦略の成否をわける鍵だと説く。
■顧客調査を捨てろ
実地実戦では、顧客が本当に望んでいる事がつかめておらず、経営判断も間違えるという「初歩的なエラー」が多い。なぜ事業の当事者たちが顧客を誤解するのか? その鍵は、顧客も私達も、実は「表層意識」では、自分が本当に何を欲していて、どう行動しているのかが理解できていない、という事実にある。だから顧客調査を行っても、そもそも顧客は知らずに嘘をつくものなのだ。しかし、方法は2つある。
①適切な方法でちょっとだけ深い深層心理での判断行動を分析する
②本当に顧客の深層心理に敏感になるまで、私達が感度を磨く
300〜1000人の顧客調査は、いったん捨てて考えた方がいい。人間の頭脳は、どんなに多くても10を超える数の事実に触れると、表面的な理解しかできない。100を超える調査は表面しか理解できない事を暗黙に想定しながら行うようなものである。
■N3の根幹
①顧客の理解=深層心理の理解
人は、頭や表層意識では4、5%しか自分の行動を理解できていない。だから、彼らに聞いても、顧客は知らずに嘘をついてしまう。
②正確な情報だけから顧客に迫る
人間が正確に答えられる事は1つ。「自分はこちらを選ぶ」という選択の意思決定である。これを分析に活用する。基本的な考え方としては、様々な商品スペックや、ブランド、付随するサービスなどの要素を組み合わせた架空の商品を作る。そして、顧客がどちらを選ぶか尋ねていき、その結果から、どの要素がどれだけ効いているのかを逆算する。その推計するアルゴリズムには、直行計画またはコンジョイント分析という手法を応用する。
③トレードオフと価格プレミアムが正確にわかる
分析の要素に金額情報を入れると、金額とのトレードオフがわかる。つまり、様々なものについての、価格プレミアムや、ブランドプレミアムの価値が推計できる。
④大切なことに気づく
おおむね3人分のデータを見ると、ざっくり市場の立体感が見え始める。考えるよりもN3を行うとはっとして気づく。勝手な想定が危ないという事に意識が及ぶ。さらに、新たな可能性や限界についてヒントに気づき始め、次にどうしたらいいかに意識が向かう。
N3で気づき始める事が大切である。現実にはN6〜N7くらいで素早くというのが多い。
著者 小川 政信
1959年生まれ。インスパーク 代表取締役 マッキンゼーで日米欧亜のクライアント企業とともに、新規事業開発、マーケティング、経営判断・経営ターンアラウンド、R&Dマネジメント、M&A・アライアンス等を経験。 1996年に独立し、 経営の戦略的支援と経営人材の開発を最高の費用対効果で提供するため、インスパーク株式会社を設立。 戦略コンサルティングと人材開発をおおむね50%ずつ行うが、独特のアプローチと実戦感覚から多数の実地のテーマを同時並行で取り扱う。 実績は約200社、2000の案件、8000名。 最上級層の人材開発と経営テーマ解決を同時に任されることも多い。 また大前&アソシエーツのほか、投資ファンド、人材開発、 経営コンサルティングのプロフェッショナル組織の立ち上げ、エンジン開発、成長加速を成功させる。
帯 ヤマトホールディングス代表取締役 木川 眞 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序章 シンプルに、スピーディーに | p.13 | 7分 | |
第1章 意識を向ける | p.27 | 7分 | |
第2章 初歩的なエラーに気づけ | p.41 | 24分 | |
第3章 マーケティングと事業戦略を読みきれ | p.89 | 25分 | |
第4章 思考のうずを打破せよ | p.139 | 8分 | |
第5章 実地・実戦ではこう動く! N3 | p.155 | 14分 | |
第6章 手に入れたい未来 | p.183 | 15分 | |
第7章 悪手を捨てて、攻めの一手に転じよ | p.214 | 9分 | |
第8章 豊かで戦略的な生き方へ | p.233 | 9分 | |
おわりに 豊かに生きる | p.252 | 2分 |
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