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2013/11/15更新

キレイゴトぬきの農業論 (新潮新書)

137分

3P

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健康な野菜

よくある誤解に「虫が喰っているくらいの野菜の方が健全で美味しい」というものがある。しかし、そんな事はない。畑では弱い固体から病害虫にやられる。一方で農薬を使うと、淘汰されるべき弱い株も生き残ってしまう。その結果、本当に健康に育った野菜と、そうでない野菜の区別がつかなくなってしまう。あえて厳しい環境に晒す事で健康でない物を淘汰させ、「健康な野菜」だけを選別するのが有機野菜である。美味しさの3要素に比べれば寄与率は少ないものの、有機野菜が美味しいと言われる理由には、この選別機能も影響している。

野菜がまずくなっている

現在は、様々な栽培方法で全国の産地から冷蔵輸送ができるので、店頭の品揃えは1年を通して安定している。しかし、栽培技術や品種改良が発達しても、適した季節の物には味も栄養価も遠く及ばない。昔は旬の美味しい時期にしか出回らなかった。欲しい物が欲しい時に手に入るようになった利便性の対価として、年間を通じた味の平均点は下がっている。これが日本の野菜の現状である。

農業者の競争環境が年々厳しくなる中、人件費の高い日本では栽培のコストをどれだけ下げられるかが重要な経営課題である。種を販売する種苗会社にも、生産現場のニーズに合わせた品種の開発が強く求められている。病気に強い品種、形の良い品種、寒さ暑さに強い品種、収量の高い品種など。この状況では、味や食感という要素が犠牲になってしまう事も少なくない。

生鮮野菜の味に大きく影響するのが、収穫から食べるまでの日数と管理方法、つまり鮮度である。野菜は収穫後も呼吸や蒸散といった生命活動を続けるので、蓄積された栄養分が消費され、時間が経てば味は必ず落ちる。鮮度を語る際に気をつけなくてはならないのは、見た目がパキパキしているから鮮度がいいとは限らないこと。近年、コールドチェーンと呼ばれる冷蔵輸送技術が発達し、生産地であらかじめしっかり冷やされた野菜がトラックで冷蔵輸送され、店頭でも冷蔵ショーケースに並べられる。こうしたシステムの普及に伴って、野菜の流通はかつてないほど広域化・長時間化している。途切れない保冷によって見た目はそれなりに保たれても、味は落ちる。

小規模農家のゲリラ戦

「日本の農業は諸外国に比べて平均耕地面積が小さく、効率が悪い。大規模化・機械化・効率化を進めて農業を国際競争力のある成長産業にすべきだ」という意見をよく目にする。しかし、大規模化だけが解決策の全てではない。「飲食業は個人経営で小規模なお店が多く、効率が悪い。大規模化を進め、外資のチェーンに対抗する日本の飲食業を!」と政府が言い出したら、多くの消費者は余計な事だと思うだろう。

規模拡大を考えた場合、少ない種類に特化した方が合理的であるが、逆に小さい農業は、ニッチ市場を埋めている。