脱サラして農業を始めた著者が農業について本音で語る。有機野菜は本当に美味しいのか、どうすれば小規模農家は生き残れるのか、これからの農業には何が必要なのか。農業について詳しくなります。
■有機農業3つの神話
世の中の人々が持っている、有機野菜に関する誤ったイメージを「有機農業3つの神話」と呼んでいる。
①有機だから安全のウソ
有機農産物は、適正に農薬を使った普通の農産物と同程度に安全である。現在の農薬の規制は、これ以上は無理なくらいに安全に配慮されている。農薬は適正に使用する限り、食べる人に危険を及ぼす事はまずない。
②有機だから美味しいのウソ
野菜の美味しさを決めているのは、圧倒的に栽培方法以外の要素である。野菜の味を決める大きな要素は3つ。栽培時期(旬)、品種、鮮度である。この3要素で8割方決まる。栽培方法をどんなに工夫しても、品種や時期といった土台の大きさを超える事はできない。そのため、世の中には美味しくない有機野菜もたくさん存在する。
③有機だから環境にいいのウソ
環境問題は広範囲で複雑多岐にわたるため、有機農業という1つの方法論が、あらゆる側面において環境負荷が少ないとは言えない。
■モノ×文脈=価値
美味しい野菜でお客さんに喜んでもらうためには、野菜そのものだけでなく、どうすればお客さんに高い価値を提供できるかを考える必要がある。もちろん、野菜づくりの腕は磨かなければならないが、それだけでは不十分である。野菜の見せ方や、加工品の開発など、その野菜がお客さんにとってより価値のあるものになるような文脈の提案もまた、農業の一部である。
最近はモノだけでお客さんを感動させ続ける事はできない。逆に言えば、提示の仕方によって、同じモノでも価値は変えられる。飲食業界の皆さんがおっしゃるのが「料理の味は満足度の2〜3割に過ぎない」ということ。美味しい事は大切だが、たとえ同じ味の料理やお酒を出しても、お店の雰囲気、サービス、さらにお客さんの満足度は大きく変わる。
著者 久松 達央
1970年生まれ。久松農園 代表 大学卒業後、帝人で輸出営業に従事。1999年、農業へ転身し、久松農園を設立。年間50品目以上の旬の有機野菜を栽培し、会員消費者と都内の飲食店に直接販売をしている。
週刊 東洋経済 2013年 10/12号 [雑誌] |
エコノミスト 2013年 10/22号 [雑誌] 早稲田大学政治経済学部教授 原田 泰 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに――「キレイゴト」から離れて | p.9 | 2分 | |
第1章 有機農業3つの神話 | p.13 | 13分 | |
第2章 野菜がまずくなっている? | p.37 | 9分 | |
第3章 虫や雑草とどう向き合うか | p.55 | 13分 | |
第4章 小規模農家のゲリラ戦 | p.79 | 27分 | |
第5章 センスもガッツもなくていい | p.131 | 8分 | |
第6章 ホーシャノーがやってきた | p.147 | 12分 | |
第7章 「新参者」の農業論 | p.169 | 17分 |