予定調和を壊す
モノあまりの時代でも、お客様は新しいものを求める。それを裏返せば、人のものまねをしても「二匹目のドジョウ」はあまり売れないということ。二番手商法はなかなか通用しなくなった。
これまでにない組み合わせや結び付きを提案したり、提供する事を、秋元康さんは「予定調和を壊す」と表現する。「小売業の魅力の本質は、予定調和を崩す新しい提案が絶えずあって、『おや、今度はどんな新しい提案があるのだろうか』とワクワクして期待をもってもらう事ではないか」という秋元さんの話は「売る力」の本質を言い当てている。
コンビニは従来、若い食べ盛りの人たちをメインの客層として、弁当やおにぎりなど、即食性の高い商品を提供して、成長してきた。そのため「コンビニといえば、ああいう店だ」という固定したイメージができ上がっていた。もし、その予定調和のままでいたら、店はマンネリ化し、おそらく日販は伸び悩んでいただろう。予定調和を壊し、お客様に「おや」と感じてもらうには、提案する側自身が日常生活の中で「おや」と思うような「気づき」を持つ事が重要である。
空白地帯を見つける
「上質さ」と「手軽さ」は、一般的にはトレードオフの関係にある。お客様は「上質さ」だけでも満足しないし、「手軽さ」だけでも満足しない。「手軽さ」なら手軽一辺倒ではなく、どれだけ「上質さ」をちりばめるか、逆に「上質さ」ならば上質一辺倒ではなく、その中にどれだけ「手軽さ」をちりばめるか、そこに価値が生まれる。
ポイントは「上質さ」と「手軽さ」という、タテとヨコ、2つの座標軸で市場をとらえた時、競合他社も進出していなければ、誰も手をつけていない「空白地帯」を見つけ、自己差別化をする事である。世の中のヒット商品を見ると、手つかずの空白地帯に投入しているケースが多く見られる。セブンプレミアムのヒットも手つかずの空白地帯を見つけ出した事によるものだった。
仮説を立てる
「お客様のために」考えるのと、「お客様の立場で」考えるのとでは、全く違った答えが出てくる事がある。「お客様のために」は、「売り手の立場で」考えた上での事であり、そこには過去の経験をもとにしたお客様に対する思い込みや決めつけがある。これに対し、「お客様の立場で」考える時は、時には、売り手としての立場や過去の経験を否定しなければならない。自分たちにとって不都合な事でも、お客様の都合に合わせて実行する。それが「お客様の立場で」考える仕事の仕方である。
真の競争相手は競合他社ではなく、絶えず変化する顧客のニーズである。目を向けなければならないのは、「明日の顧客」のニーズである。そこで必要になってくるのが「仮説を立てる」という仕事の仕方である。そして、販売結果をPOSデータで検証するのである。