自分の武器になるものをはっきり打ち出す
ビジネスにしても、やり方はゲームに似ている。「最終的にどうなるか」というイメージをはじめに持つようにして、そこから逆算するようにそこまでのプロセスを考えていく。最初に立てたイメージは、時間の経過・環境の変化とともに現実との誤差が生まれてきても、大枠ではそれほど変わらないからである。
ただ、ニコニコ動画に関してだけは、それとは少し違っていた。ニコニコ動画は最初の段階では「生放送のサービスをやりたい」と考えてスタートした企画だった。というのも、動画共有の分野では、すでに「YouTube」がサービスを確立させており、そこで勝負をしても仕方がないという感覚があったからである。そのため、当時は「生放送」「ライブ感」といった部分で、どんなコンテンツを打ち出していくのがいいのかと、試行錯誤を繰り返していた。
この時、将来的なビジネス展開という意味では「長期的な競争でYouTubeに勝てるか、差別化できるか」を考えていた。普通に考えると勝算は低いが、外資系の会社が日本でサービス展開していく上で「日本市場におけるゲリラ戦」には弱いだろうというのが攻略ポイントになると捉えていた。
ニコニコ動画は「2ちゃんねる」の開設者であるひろゆきにもずいぶん助けられた。ひろゆきは「ユーザーはネタを肴に盛り上がりたいだけで、コンテンツの中身の良し悪しが重要なのではない」といった話をしていた。そうした後押しがあったからこそ、「いけるはずだ」と踏み切る事ができた。ゲームもビジネスも同じで、何かの事業やアクションを起こすのであれば、「自分の武器になるものは何なのか」を考え、それをはっきりと打ち出していかなければならない。
触媒を考える
ビジネスではプロセスを考えるのが大切である。多くのビジネスでは、ビジネスのスタート段階から、そのビジネスが一定の認知を得た段階に持っていくために、その途中でかなりのコストやリソースが必要とされる反応障壁を越えなければならない。「かなりのお金を注ぎ込む」「世間の注目を集めるキラーコンテンツ」を投入するといった事を行い、化学変化を起こす。その化学変化を起こすには何が必要なのかを考える。つまり、ビジネスを始める前から反応障壁の段階でどうするかをイメージしておく。
事業展開の見通しを立てていく上で重要になるのが「触媒」という考え方である。触媒とは、化学変化を起こすために必要となるエネルギー値を下げるもの。技術や人脈など、自分たちが持っている中で、触媒にできるものはどれなのかを考える。ニコニコ動画には、政治家が生放送で答弁するコンテンツがあるが、最初に小沢一郎さんが登場してくれた事で、他の政治家にも続いて登場してもらえるようになった。