起業や独立こそ、身を守る手段だということが唱えられる風潮の中、会社員として働くことの大切さを説く1冊。会社組織の中で他者と信頼関係を築いて働くことこそが、ビジネスの基礎力を養うと説く。
■会社員は、スティーブ・ジョブズにはなれない
「スティーブ・ジョブズを尊敬しています」。若手サラリーマンと話をしていると、誰それに憧れているという話を耳にする。しかし、そういった成功者を目標にすると、自分に合う本当の道が別にあるものと思い込み、日常の職場に充足感が持てなくなる恐れがある。
会社員は、そもそもスティーブ・ジョブズにはなれない。そもそも突出した器量や個性を持つ人は、採用担当者の能力を超えているため採用の可否が判断できない。天性の才能がなく、飛び抜けた個性もないからこそ、あなたは採用されたのである。
サラリーマンには「仲間として一緒に働ける」という大きな取り柄がある。それは立派な能力の1つである。周囲の人と協調しながら、組織の目的に向かって努力できるという大切な資質なのだ。それは会社員生活にとどまらず、長い人生において強力な武器になる。
やりがいのある仕事がしたいと考えるサラリーマンの多くが、自分にしかできない事をしたいと思っている。ところが、会社組織は、誰もができる事をベースに仕事を設計している。つまり、サラリーマンは、「取り替え可能」である事が求められている。もしあなたが突然病気で会社を休んだとしても、誰かがマニュアルを参照したり先輩に教わればなんとか代打を務める事ができるようにしておかなければ、仕事は回っていかない。
間違えてはいけないのは、誰がやってもできる仕事=どうでもいい仕事ではないこと。むしろ、取り替え可能なように周囲とうまく連携していくことにポイントがある。取り替え可能な自分になるために大切な事は、日々の仕事において周囲と連携する力がある事が最も重要である。周囲とコミュニケートしてつながっていく関係を磨く事が、ビジネスの基礎力を養う。
若いうちは、目の前の仕事に没頭すること。若手社員の時に、会社から受け取るのは給料だけではなく、仕事の経験、知識、人との付き合い方だといえる。好きな仕事や自分らしさを発揮する場を探すために、膨大な時間と労力を費やすくらいなら、周囲の同僚や顧客と楽しくやっていけて、どんな仕事でも前向きに取り組める自分になるために何をすればいいかを考えるべきである。
著者 楠木 新
1954年生まれ。楠木ライフ&キャリア研究所 代表 大手生命保険会社に勤務し、人事・労務関係を中心に企画、営業、支社長等を経験。 勤務のかたわら、ビジネスパーソン200名にロング・インタビューを重ねる。 朝日新聞beに「こころの定年」を1年余り連載。 関西大学商学部で非常勤講師を勤めるとともに、NPO団体で医療に関する電話相談のボランティアにも参加。 47歳の時に関連会社から本部機構に転勤してまもなく「うつ」症状になり、約2カ月間休職。その後、平社員として復職、1年足らずで役職に復帰。今後の夢は、「うつ」を経験したことも活かしながら、キャリアカウンセラーとして、ビジネスマンの顔つきが良くなることに貢献すること。
マインドマップ的読書感想文 smooth |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.5 | 4分 | |
第1章 サラリーマンにありがちな、勘違いの仕組み | p.17 | 15分 | |
第2章 雇用契約にはないメンバーシップの仕組み | p.45 | 24分 | |
第3章 メンバーシップを築く働き方の仕組み | p.89 | 21分 | |
第4章 やっぱり気になる人事評価、異動、出世の仕組み | p.127 | 17分 | |
第5章 組織からの自立の仕組み | p.159 | 14分 | |
おわりに | p.177 | 3分 |
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