消費者はイノベーションする
消費者イノベーションでは、ある消費者が自分のニーズを満たすために製品イノベーションし、その製品の詳細が時に多くの消費者や企業に共有され、同等のものが複製され、市場化されながら市場が拡大していくと言われる。
先進国では製品を新たに作ったり、既製品に手を加えて改良する創造活動を行う消費者が無視できないほど存在し、そこで投入されている金額や時間もかなりの程度である。しかし、消費者イノベーターが生み出した製品の多くが、本人が使うレベルにとどまっていて、企業の製品案として採用されて製品イノベーションへと結実している割合は非常に低い。
リードユーザーがイノベーションする
消費者イノベーションは、ある特徴を持った特定のユーザーによって行われる傾向がある。そのユーザーは、リードユーザーと呼ばれ、次の2つの特徴を持っている。
①当該市場の多数のユーザーが抱く事になる新しいニーズに先行して直面している
②その新しいニーズを満たすイノベーションを実現する事で大きな便益の獲得が期待できる
リードユーザーを発見するための1つのアプローチは、標的とする市場の最先端に注目するというもの。もう1つは、自分達と似ている市場の最先端や、そこで極端な課題に直面しているユーザーに注目するというものである。こうした視点を習得すると、様々な市場におけるリードユーザーを特定しやすくなる。
ex.競技道具を開発・改良する五輪金メダル候補選手、F1レーシングチーム
消費者はイノベーションを無料公開する
イノベーションを行った消費者は、その情報を無料公開する場合がある。特にその製品に関連するコミュニティに所属するイノベーターが、イノベーション情報を公開する傾向があり、その動機はコミュニティに属している事と関連している。こうした消費者によるイノベーション情報の公開と他の消費者のイノベーション情報の利用は、インターネット技術の進歩と普及によってますます容易になってきている。
ex.レゴ、初音ミク
消費者の多様性がメーカーの能力をしのぐ
コミュニティに属している消費者が起こしたイノベーションは、このルートに乗りやすく、実際に普及しやすい傾向が出ている。しかし、コミュニティに属していない個人消費者の場合は、イノベーションが本人のレベルでとどまっている場合が多い。
その一方で、三次元印刷技術の発達が消費者のデザイン・製造コストを下げ、スマートフォンとSNSの進化が消費者間や消費者・企業間のコミュニケーション費用を引き下げようとしている。その結果、個人消費者による製品イノベーションとその普及がこれまで以上に容易になろうとしている。