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2013/10/23更新

ゲームのルールを変えろ――ネスレ日本トップが明かす新・日本的経営

235分

4P

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ゲームのルールを変えろ

人口が減少し、少子高齢化が進めば、胃袋の容量も小さくなる。だが、縮小するマーケットでもチャンスは必ず存在する。それを形にしたのが「ネスカフェアンバサダー」の取り組みである。

人口が減少しているとはいえ、日本の世帯数は1人世帯、2人世帯の激増で右肩上がりに増えている。世帯あたりの家族数が減ると、それまでのコーヒーメーカーで作った分量は飲み切れない。煮詰まったおいしくないコーヒーを飲むか、捨てるかしかなくなる。そこにこそ、チャンスがあった。そこから、好きな時に1杯ずつ飲める「ネスカフェドルチェグスト」や「ネスカフェゴールドブレンドバリスタ」というコーヒーメーカーが登場する事になる。少し値段が高くても淹れたてのおいしいコーヒーを1杯分飲みたいというニーズに応えられるため、1人暮らしでも問題ない。

家庭用のマシンだけではない。オフィスでおいしい淹れたてのコーヒーが1杯20円で飲めたとしたら、ビジネスパーソンはどれだけ助かるだろうか。ネスレ日本にはすでにコーヒーマシンはある。そこでネスカフェアンバサダーというビジネスモデルを思いついた。コーヒーマシンをオフィスに無料で置いてもらい、「ネスカフェ」の購入量を増やす事で収益を上げるモデルを構築した。コーヒーの購入と代金回収の管理は、代表者のアンバサダーに協力して頂く。

アンバサダーの応募は、2013年7月末の段階で9万人を超えた。同時に「ネスカフェゴールドブレンドバリスタ」も、売上が200%で伸びていて、品薄状態になる事もあった。街のコーヒーを飲み、「ネスカフェ」を飲まなかった若い世代が、意外とおいしいといって飲み始めている。会社で「バリスタ」で淹れた「ネスカフェ」を飲んでおいしいと感じた人が、自分の家庭用に購入するという連鎖が始まっている。アンバサダーが新たな販売チャネルになったのである。

そもそも「ネスカフェ」の家庭用コーヒーのシェアはおよそ70%である。残りの30%のシェアを取りにいくよりも、今はほとんど飲まれていないところをターゲットにした方がいいと考えた。オフィスでは、1日何杯もコーヒーを飲みたいと思う人はかなり多い。「バリスタ」をオフィスに置けば、必ず成功するという確信はあった。

「ネスカフェゴールドブレンドバリスタ」という、なかなか真似のできないコーヒーマシンを持っているのは、競合他社との差別化になる。仮に機械的に真似されても、アンバサダーのマネジメントを強固に構築しておけば、ビジネスモデルとしてはそう簡単に真似できるようなものにはならない。

たとえ厳しい環境下にあっても、そこに既存の枠組みにとらわれない発想を持ち込めば、新たなイノベーションを起こす事は不可能ではない。