個人と企業の関係性の変革
現代の企業が抱えている経営課題を解決するためには、「個人」の能力を最大限に引き出すための新しい経営手法が必要になる。それは、在宅勤務制度やテレワークという制度を作ったり、勤怠管理の方法を変えたりしても解決しない。個人と企業の関係性を抜本的に変える必要がある。
①企業は「個人の成長を支援する器」に
企業がやるべき事は、時間や数値の管理などではなく、個人を大人として扱い、自立的にモチベーション・能力を高めながら、柔軟な発想を生み出せる環境を作る事である。
②「分業」から「個人の総合力」の組み合わせへ
個人が限られたパーツの限られたプロセスだけに長けていればいい時代は終わりつつある。特定の領域には精通しながら、より上位の概念から考えて仕事をする事が求められていく。
③「同質の人材育成・維持」から「多様な人財の新陳代謝へ」
魅力ある器にはモチベーションの高い個人が集まっていく。企業は人を集めても、ある人は去っていく。それでも、人の流動性の高い環境を維持する事が、大事な価値になっていく。
アグリゲーターの時代
これからの主役は個人であり、新しい働き方を体現している社員たちが企業の成功のカギを握っている。現代社会で自立的な新しい働き方を体現している人々を「アグリゲーター」と呼ぶ。彼らは、社内・社外を問わず、課題解決に必要な優れた情報力・技術力を持ちながら、自分のやるべき事を見出し、それをいかなる環境においても最後までやり切る「力」とモチベーションを持つ。彼らの思考や行動の特徴は5つ。
①将来やってくる社会を具体的にイメージし、自分たちならどのような貢献ができるのか考えてしまうし、プランを書かずにはいられない
②既存事業の枠組みに囚われず、その瞬間に最も適切と思われる事業モデル・アプローチを設計・実行する
③事業を実現するために必要な能力を見極める事ができる。それを集めるだけのネットワークを持っている
④状況に応じて、自分の古いスキル・成功経験、能力をいとわず捨てる事ができる
⑤強烈なビジョニング力(「自分が何をしたいのか」を明確化し、それを行動で表現し、価値創出につなげる能力)を備えている
アグリゲーターを動かすのは、単なる「知識」や「技術」のストックや切り売りではない。自らゴールを設定し、そこに向かって自分を、そして周囲を駆り立てさせるほどの「エネルギー」である。
現段階では、アグリゲーターになり得る人たちが社内にいたとしても、従来の経営を続けているならば、その能力を十分に活かせないだろう。そうなるとアグリゲーターたちは、自己実現するべく独立していく。「個人の働き方」が変わろうとしている現在、企業経営も、個人のアグリゲーター化を促進する形に変わる必要がある。