コピーの名作を事例に挙げながら、人を動かす言葉について考える1冊。伝える事で、人を動かす発想法を学ぶ。
■「売り言葉」と「買い言葉」
広告のコピーは「売り言葉」と「買い言葉」の2つに分けられる。「売り言葉」とは、企業側の目線に立った言葉。「買い言葉」とは、買い手の目線で書かれた言葉である。
・売り言葉
「うまい、やすい、はやい」(吉野家)
「ベンザエースを買ってください。」
・買い言葉
「くうねるあそぶ。」(日産セフィーロ)
「恋を何年、休んでますか。」(伊勢丹)
「買い言葉」は、広告表現が円熟期を迎えた1980年代にたくさん生み出された。日本が経済的に豊かになり、もので溢れかえっていた時代、独自性が生まれづらい状態にあった。売り手は、どうすれば差別化できるかを考え、売り手から買い手の目線へと立ち位置を変えた。
「売り言葉」と「買い言葉」を普段のコミュニケーションでも意識できるようになれば、言葉はずっと魅力的で効果的な武器になる。
■相手の心を動かす言葉
情報を正確に伝えるだけでは、コピーライターの仕事としては不十分である。人が何かを伝えようとした時、その根底には相手の気持ちを動かしたいという目的がある場合がほとんどではないか。ところが、多くの人は「どう動かすか」という発想ではコミュニケーションを図っていない。
相手の心を動かし、行動を促す言葉を生み出すには、相手の意識と自分の意識をできるだけ重ね合わせるよう努めるところから始める。その時に大切なのは、相手の事を好きになる姿勢である。相手を好きになれば「これは相手にとって知りたい情報かな?」という意識が芽生える。そうすると、伝え方は自然と変わってくる。
相手を好きになる前提は、その人を理解すること。そのために、できるだけその人に詳しくなることである。
■コピー作法の基本
①ど真ん中の価値を探す
伝えたい事の一番中心にある価値、それがないとすべてが台無しになってしまう何かを探す。
②自分にしつこく取材をする
買い手の声などの調査データは、「ちょっとキレイごと」だから、疑ってかかる。人はつい小さなウソをつくため、自分に取材をする。
③100案書く
深く掘るには、広く掘らなければいけない。発想を広げていかないと、考えは深くならない。さらに言葉には正解がないから、たくさん考える必要がある。
著者 岡本 欣也
1969年生まれ。コピーライター マドラ出版社の主催する広告学校で岩崎俊一と知り合ったのを機に、1994年に岩崎俊一事務所へ入社。2010年オカキン設立。 おもな仕事に、ホンダ「ハイブリッドカーを、安くつくれ。」 日本たばこ産業「たばこを持つ手は、子供の顔の高さだった。」 家庭教師のトライ「トライなら、落書きするヒマを与えません。」 英会話のジオス「英語を話せると、10億人と話せる。」 イオン「メニークリスマス」など。 テレビ番組「しまじろうのわお! 」のクリエイティブディレクター、フリーペーパー「FILT」のクリエイティブアドバイザーも。 TCC賞、ACC賞、ADC賞、朝日広告賞、読売広告賞、日経新聞広告賞など受賞多数。
週刊 ダイヤモンド 2013年 9/21号 [雑誌] 丸善・ジュンク堂営業本部 宮野 源太郎 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序 伝えるのが苦手な僕らへ | p.11 | 8分 | |
第一章 広告コピーは「売り言葉」と「買い言葉」でできている | p.27 | 8分 | |
第二章 売り言葉を考える―振り向かせるための発想法 | p.43 | 27分 | |
第三章 「買い言葉」を考える―共感を呼ぶための発想法 | p.97 | 21分 | |
第四章 「売り言葉」と「買い言葉」のまとめ | p.139 | 11分 | |
第五章 人の心を動かす言葉 | p.161 | 25分 | |
あとがき | p.210 | 1分 |