増加する孤立無業
2011年時点では60歳未満未婚無業者数は255.9万人にのぼり、その内孤立無業は162.3万人に達する。162万人という数字は、ニート(15〜34歳の非労働力人口の内、通学、家事を行っていない者)の数60万人と比べ、100万人も多い。162万人の孤立無業の内、家族型孤立無業は8割を占めている。
孤立無業は1996年には74.6万人だったが急増している。特にリーマン・ショックや東日本大震災のあった2006〜2011年にかけては、5年間で50万人以上増加した。
孤立無業の中で、深刻な発見は、若年無業者の孤立が2000年代に入って急速に進んでいる事である。その事が孤立無業が大幅に増えていった背景の1つになっている。そもそも孤立無業は、中高年から生まれやすい傾向があった。しかし、かつてであれば学校時代の友達などの人間関係があった若年層ですら、友人・知人との交流が乏しくなっている。
孤立無業と密接な関係が発見されたのは学歴だった。2006年までは中学卒(高校中退)の人々が孤立無業になりやすい傾向があった。しかし、2011年になると、大学や大学院を卒業した無業者の中で孤立無業の割合が急速に高まっている。これらの変化は、年齢、学歴によらず、無業者になると誰でも孤立しやすくなるといった傾向が生まれつつある事を意味する。
孤立無業者はどうやって生活しているのか
スネップ全体では8割以上が誰かと同居している。スネップ本人に収入がなかったとしても、親や兄弟などの収入によって、日頃の食事や買い物などに必要なお金の大部分はまかなわれている。1人暮らしのスネップについては、貯金の取り崩し、仕送り、生活保護によって生活している可能性が考えられる。
ニートとスネップ
ニートとスネップは、全く異なる概念である。ニートは、無業者の中でも仕事を探していない人の事を言う。それに対して、スネップは、普段友人や知人との交流がない無業者の事である。つまり「切り口」が異なる。ニートでもあり、スネップでもある人は3割存在する。60歳未満未婚無業者の4人中3人は、スネップ、ニートのどちらかに属している。
無業者がニートになり、求職活動をしなくなったり、働く希望を失う背景には、社会との交流の欠如がある。スネップは、ニートを生み出している理由の1つになっている。さらに言えば、ニートになる事が、ますます無業者の孤立に拍車をかける。スネップとニートが悪循環のスパイラルに陥ってしまうと、どちらからも抜け出す事が難しくなる。
増加する孤立無業を放置すれば、生活保護の増加、労働力不足など、社会全体に大きな問題となって降り掛かってくる。孤立無業の増加に歯止めをかけるためには、専門家が自宅まで訪問し、外に出るきっかけをつくる「アウトリーチ」が必要である。