オムニチャネルとは
小売業における顧客接点は、お店とお客様の単一接点である。やがて、カタログ通販、テレビショッピング、ネット通販などの別の顧客接点の場が生まれた。これをマルチチャネルと呼ぶが、お客様に複数の購買選択肢ができたものの、引き続き小売業側とお客様の接点はそれぞれのチャネルごとに単一の関係が続いている。このマルチチャネルが発展し、お客様がネットで注文しお店で受け取るような、チャネルを横断した購買行動が取れるようになった。これをさらに進化させ、お客様の購買履歴など顧客情報を一元管理したものがオムニチャネルである。
オムニチャネルとは、オムニ(全ての)チャネルを連携させてお客様にアプローチする事を示す。チャネルとは、実店舗やテレビ、通販、ウェブサイト、モバイル、SNSなどのあらゆるチャネルを指す。オムニチャネルでは、お客様の購買行動を観察しながら、リアルとネットを違和感なくシームレスに行き来できるように流れを再構築し、顧客体験の最大化を目指す。お客様は、店頭でもネットでも販路や手段を気にせずに、いつも同じ感覚でショッピングを楽しむ事が可能になる。
小売業のオムニチャネル化、お客様の利便性の追求やワクワク体験などの仕掛けの自由度を考えると、顧客接点の量と密度のレベルが高い小売業ほど、圧倒的な顧客優位性を築く事ができる。
コングロマリットが評価される時代へ
セブン&アイ・ホールディングスは、ネットのグループ統合に向けた第一歩として、グループ企業のネット事業を一本化。イトーヨーカ堂のネットスーパーやセブン・ミールサービスのセブンミール、子供用品専門店のアカチャンホンポ、そごう・西武のe.デパートなどのサイトをセブンネットショッピングに一本化し、それぞれのお客様のIDが将来連携できるような体制を整えた。
セブン&アイ・ホールディングスは、その店舗網、顧客接点の量と密度、提供可能な商品の多様性、それを支える人材、物流を考えると、セブンネットショッピングを新たなプラットフォームとして各事業会社が一気通貫につながる事によって、世界に類を見ない小売グループへと成長する事ができる。
「選択と集中」と言われる昨今の流れの中で、小売業界でもどちらかというと単一事業形態である専門店の方が高く評価される傾向があった。セブン&アイ・ホールディングスも、コンビニ業界は良いが、総合スーパーや百貨店は業界環境が厳しいという指摘を受けた。しかし、コンビニから百貨店まで、赤ちゃん本舗からお年寄り向け宅配サービスまでが、オムニチャンネルでつながった時に、コングロマリットディスカウントというラベルは、コングロマリットプレミアムへと貼りかえられる事になるだろう。