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2013/09/27更新

そして日本経済が世界の希望になる (PHP新書)

142分

8P

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アベノミクスが進める金融緩和についてノーベル経済学者が語る

インフレターゲットを提唱するノーベル経済学者が、日本の経済政策について語った1冊。アベノミクスの評価が書かれている。


■金融緩和の成功条件
日本銀行はマネタリーベースを2年間で倍増させる「異次元の金融緩和」を打ち出した。金融緩和には、大きく分ければ2つの成功条件がある。

①人々が持つ将来への期待を変えること
これはさらに2つに分類できる。まずは、国家の経済は将来的に落ち込まない、と人々が信じること。その時点でマネーストックの増加がインフレを誘発するという、望ましい状況がもたらされる。もう1つは中央銀行が実際に、その金融緩和を実現に移す、と信じられることだ。もし、将来、インフレが到来すると人々が信じれば、お金の使い方にも変化が生まれてくる。

②短期金利がゼロであること
長期金利が0.9%くらいなら、民間部門の借入金利は政府部門よりも高くなる。そこで中央銀行が長期国債を買えば、長期金利の上昇を抑制し,民間部門の返済負担を軽減できる。

FRBもECBも、中央銀行が金融緩和を行って経済をてこ入れしている。こうした手法は王道と言って良い。しかし日本国内における一部の識者は世界標準の方法論に反対し、金融緩和批判に固執してきた。

超短要約

日本経済における大きな問題は少子高齢化にある。その結果、投資需要は縮小し、それが実体経済に多大な影響をもたらす。しかし、そうした条件下の経済ではデフレになるのが必然である、という考え方は間違いだ。むしろ、だからこそ実質金利を大きく引き下げ、あるいはマイナスにしなければならない、と考えるべきではないか。そこではインフレが必要とされている。日本経済の長きにわたる失敗の歴史は、日銀の政策が「船に乗り遅れた」からにすぎない。

金融緩和によって名目金利が一定に抑えられている環境の中で、期待インフレ率が上がれば実質金利は下がる。そこで投資を行いやすい環境が生み出され、景気が刺激される事になる。そして、国民がインフレが訪れると確信すれば、手元の資産は目減りが予想されるので、さらにお金を使う理由が生まれる。同時にそのインフレによって日本の国家債務も減少し、国民負担も軽減する。

アベノミクスという政策実験は、「モデルとしての日本をどのように世界に示せるか」という、経済の未来を占う上で決定的に重要な役割を担っている。アベノミクスによって本当にデフレから脱却できるなら、それは将来同じ状況に陥った国に対しても、大きな示唆になる。

著者 ポール・クルーグマン

1953年生まれ。プリンストン大学教授 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授 イェール大学助教授、マサチューセッツ工科大学教授、スタンフォード大学教授を経て、現職。 大統領経済諮問委員会の上級エコノミスト、世界銀行やEC委員会の経済コンサルタントを歴任。ニューヨークタイムズ紙の辛口コラムニストとしても絶大な人気を誇る。 1991年、40歳以下の最も優れた経済学者に贈られるジョン・ベイツ・クラーク賞受賞。2008年、ノーベル経済学賞受賞

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章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
プロローグ p.3 5分
第1章 「失われた20年」は人為的な問題だ p.21 19分
第2章 デフレ期待をただちに払拭せよ p.55 14分
第3章 中央銀行に「独立性」はいらない p.81 14分
第4章 インフレ率2パーセント達成後の日本 p.107 21分
第5章 10年後の世界経済はこう変わる p.145 16分
エピローグ p.175 3分

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