野村総合研究所が行っている「生活者1万人アンケート調査」で明らかになる消費者の購買心理、行動が紹介されています。各年代・性別ごとの消費傾向やライフスタイルの変化を解説しながら、これからのマーケティングに必要となる視座を提供しています。
■迷える消費者
現在、日本の消費者の7割が、商品やサービスを購入する際、「情報が不足していて困る」よりも「情報が多すぎて困る」と感じている事が、2012年の生活者1万人アンケートの調査でわかった。インターネット上の各種評価サイト、身近な人のクチコミ、店頭販売員のオススメ、多くの断片的な情報がパラレルに入ってくる事で意思決定が難しくなり、どれを買うべきかの判断がしにくくなっている。矛盾した情報も多く、どう判断して良いかわからない状態で、「自分が間違った判断をしてしまうのではないか」と考えている人が46%と半数に達する勢いである。
では、消費者は「もう自分で判断するのは面倒だから、誰かに決めて欲しい、選んで欲しい」と思っているのか。調査によれば、約8割の消費者が、「自分の事はすべて自分で決めたい」と考えている。さらに約8割の人が「自分の性格・好みを理解した上で、それに適した選択肢を勧めて欲しい」と感じている。つまり、個々の消費者のニーズに合った選択肢をうまく提示する事ができれば、消費者は満足感を持って決断する事ができるはずである。
■なぜ、日本人はモノを買わないのか?
消費者が憧れるライフスタイルとして、高い収入を得て、それを好きなように使うという生活が支持されなくなってきている。全方位的にお金をつぎ込む人よりも、本当にこだわりのあるところにのみお金をかけ、それ以外のところではコストパフォーマンスの高い賢い消費をしている人の方が、「自分らしい消費をしている」と認められるようになってきた。そのため、売れ筋価格帯の二極化も進んでいる。
消費の二極化は、日本に限らず欧米先進国などのモノ余り・成熟化した市場では顕在化した現象である。ただ、日本の場合は長引く不況と、低価格品の充実により、出費を控えようとする分野での低価格志向が一層強い事と、こだわりの分野であってもよほど気に入らない限り高いお金を出す事がないというシビアな選択意識が働いている。
日本人の景気・経済の先行きを悲観する傾向は、直近15年ほどの間で最も強くなっている。しかし、社会の一員としての役割や人との絆の重要性を強く認識し、日々の生活を大切に送る事に幸せや満足を感じるようになってきているなど、価値観の変化がみられる。いわば「足るを知る」といったような大きな生活価値観の変化は、消費価値観の根幹をなすものとして、様々な消費行動に影響を与えていく。
著者 松下 東子
NRI 主任コンサルタント 経営コンサルティング部マーケティング戦略グループ主任コンサルタント。1996年東京大学大学院教育学研究科教育心理学専攻修了、同年野村総合研究所入社。 以来、一貫して消費者の動向について研究し、企業のマーケティング戦略立案・策定支援、ブランド戦略策定、需要予測、価値観・消費意識に関するコンサルテーションを行う。
著者 濱谷 健史NRI コンサルタント 経営コンサルティング部マーケティング戦略グループ副主任コンサルタント。2010年京都大学大学院情報学研究科数理工学専攻修了、同年野村総合研究所入社。専門はマーケティング戦略立案、需要予測、生活者の意識・価値観・行動分析など。
著者 日戸 浩之NRI 上席コンサルタント 経営コンサルティング部マーケティング戦略グループ・グループマネージャー、上席コンサルタント。1985年東京大学文学部社会学科卒業、同年野村総合研究所入社。 1996年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。専門はマーケティング戦略立案、生活者の意識・行動分析、サービス業(教育、人材関連)の事業戦略など。 現在、北陸先端科学技術大学院大学客員教授を兼務。
日本経済新聞 |
日経ビジネス |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 日本人の欲望とジレンマを「見える化」する | p.1 | 43分 | |
第2章 キーパーソンとなる消費者プロファイル | p.57 | 50分 | |
第3章 情報疲労時代のマーケティングストーリー | p.123 | 53分 | |
あとがき | p.192 | 3分 |
「online to offline」の略。 インターネットからリアル(実店舗)へ顧客を送客する施…