企業再生は最初の100日間で決まる
近年の企業再生の多くは「負の遺産」を整理する事から始まる。りそな銀行の会長就任後には、2003年3月期時点で3.2兆円という不良債権を一気に削減した。社員には「最初の100日間でバランスシートの改革を実行する」と宣言し、再生の基本方針として「厳格に」「嘘をつかない」「先送りしない」という方針を掲げた。
融資残高に占める不良債権の比率は、11%超と危機的な水準だった。規制産業の中で、いかにリスクコントロールが遅れていたかを実感した。2003年9月中間期決算で1兆7700億円の過去最大の赤字を計上した。1兆9600億円という巨額の公的資金の注入を受けた約100日後、最初の100日で膿を出し切った。その結果、不良債権比率は6%とほぼ半分になった。
黒字基調の定着には、以下の手も打った。
・企業との持ち合い株式を1/3まで削減
・関連会社の整理
・OB年金の13%カット
最初の100日間で「りそなは変わった」と評価されないと、銀行の傷ついたブランドが永遠に回復しない恐れがあったので「負の遺産」は徹底して整理した。旧国鉄やりそな再生の過程で言えるのは、この種の規制産業であっても隠し事をせず、経営透明度を高めないと国民の信頼を得られないという事である。まずは顧客の信用なしに持続的発展はあり得ない。
企業風土の改革
公的資金を活用して事業を再生すると同時に、顧客基盤の崩壊を最小限に押さえる事が、トップの使命だった。ところが、危機的な状況にあった2003年から1〜2年が経過し、黒字化し、報酬カットの改善が進むと、組織に安堵感が生まれた。
その時、米IBMを立て直したルイス・ガースナー氏に相談すると、「IBMも全く同じだった。従業員は昔に戻りたがる。それを防ぐのがリーダーの役割だ」との答えが返ってきた。彼は「企業文化、社風を変えること。永遠に業務改善を続けさせる事が大事だ」との経営哲学を口にした。
銀行は常に自分たちが「特別な産業」という思いがあり、サービス改革の意識が高まらない。そこで、りそなでは以下の取り組みを行った。
・窓口を午後5時まで営業
・顧客待ち時間の大幅短縮のため、窓口に伝票不要の決済処理端末を導入
・年中無休店舗の出店
大企業病を予防する
企業は業績が上がれば上がるほど、組織に安堵感が広がり、大企業病という形で劣化する特性を持っている。それを防ぐための遺伝子や仕組みを常に組織に植え付けなくてはいけない。
新体制は10人の取締役のうち、社外取締役が6人と過半を占めた。外の世界を知るのは大事である。内部の論理と外部から見た者の間に物差しのズレがあった時、あらゆる組織の運営が悪くなる。その意味で、常に外を見る必要がある。