戦略的イノベーションが失敗に終わる理由
イノベーションをいち早く実現しようとする企業は多い。だがそんな時、大抵はアイデアづくりを重視し、それを結果に結び付ける実行面には目を向けない。だが実際に差を生むのは実施なのである。
いかなるイノベーション開発にも、序盤、中盤、終盤がある。大企業は効率性に長けている。しかし、効率性がモノをいい始めるのは終盤になってからだ。多くの会社はまた、創造性は効率の対極である事も知っている。しかし、創造性が特に大切なのは序盤だけである。
大半の企業は、中盤で道に迷う。戦略的実験に最大の抵抗が加わるのは、成功の兆しが見え始め、より資源を消費し始め、組織レベルのあちこちでコアコと衝突するようになってからなのだ。
イノベーションを阻む3つの課題
イノベーション・プロセスの中盤には同じ会社に新旧の事業が共存するという不自然さから発生する3つの課題に応えなければならない。
①忘却の課題
ニューコは、コアコが成功させ、社内常識になっている2つの事を忘れなければならない。「コアコの事業定義」と「既成概念」である。ニューコは自由に新しい考え方を追求しなければならないし、場合によってはコアコの売上を食う必要もある。
②借用の課題
ニューコがベンチャー企業と競争していくには、コアコの資産を借用するしかない。既存の顧客、流通チャネル、供給網、ブランド、信用、製造能力、技術などだ。
③学習の課題
ニューコは、事業成果の予測精度を上げていく事を学ぶ必要がある。少しでも早く予測精度を上げられれば、有効なビジネスモデルに絞り込んだり、試してみて駄目だった事などから抜け出せるようになる。
有効な組織的DNAをつくれ
忘却、借用、学習を可能にするには、組織的DNAをうまく管理しなければならない。ニューコを立ち上げる際に、そのDNAに独自の価値観や意思決定の方向性などを組み込んでおく必要がある。
①忘却への対応
ニューコとコアコ両者の雰囲気が違うだけでは不十分であり、組織として互いに独立しなければならない。
②借用への対応
上級経営者が、ニューコとコアコの間のつながりをつくる場所を慎重に考える。あまりにつながりが多すぎると、忘却が難しくなる。
③学習への対応
ニューコとコアコとは違う企画プロセスを持たなければならない。責任にこだわるより物事に挑む気風を持ち、学びとらなければならない。コアコの常識にとらわれていれば、学習が難しくなる。