「Think different」「貧困は、博物館へ」「美容を新しいアートにする」。これまで未来を創造してきたビジョナリーたちは、人々を動かす言葉を持っていた。

博報堂のコピーライターである著者が、未来を発明する言葉のつくり方を解説。新しいビジョン、新しい商品を考える際にも使える思考法を紹介しています。


■言葉は未来を発明する
新しい時代、新しい組織、新しい商品。熱狂的な「ストーリー」の始まりは、いつだって魅力的な1行だった。スティーブ・ジョブズも、ココ・シャネルも、井深大氏も、みんな「未来を語る言葉」を持っていた。

パーソナル・コンピューターが開発される前に、「パーソナル・コンピューター」という言葉が生まれていた。ポケットに入るラジオが完成する前に、「ポケットに入るラジオ」という言葉が発明されていた。想像の中の未来を鮮やかに言い当てる。変革の行方を指し示す。そうやって、未来の骨格となる言葉を「ビジョナリーワード」と呼ぶ。

「よりよい世界への展望」が「確信に満ちた適切な言葉」で語られる時、人々の行動が呼び起こされる。

未来を予測する最良の方法は、それを発明してしまうことだ。発想を現実に変えていくプロセスでは、言葉が決定的な役割を果たす。イノベーションも、言葉によって導かれていくという側面がある。

但し、言葉を発明しても、それを放ったらかしにしておいたら未来は始まらない。そのため、言葉を書くだけでなく、その前後の設計も大切である。

ビジョナリーワードを書く作業は、4つのステップで行う。

①現状を疑う（本当にそう？　と問いかける）
②未来を探る（もしも？　を繰り返す）
③言葉をつくる（つまり？　に答えられる言葉にする）
④計画をつくる（そのために　どんな行動をとるか考える）

著者 細田 高広

TBWA＼HAKUHODO コピーライター 大学卒業後、博報堂にコピーライターとして入社。Apple、Pepsi、adidas、Nissanなどのブランド戦略を手がける米国のクリエイティブエージェンシーTBWA＼CHIAT＼DAYを経て、TBWA＼HAKUHODO所属。 クリエイター・オブ・ザ・イヤー・メダリスト、カンヌライオンズ、CLIO賞、ACC賞グランプリ、東京コピーライターズクラブ(TCC)新人賞、ロンドン国際広告賞など国内外で受賞多数。 通常の広告制作業務だけにとどまらず、経営層と向き合って数々の企業のビジョン開発に携わるほか、経営者のスピーチライティング、企業マニフェスト、ベンチャー企業支援、新規事業や新商品のコンセプト立案などを手がけてきた。「経営を動かす言葉」「未来をつくる言葉」といったテーマで学生への講義や社会人への講演も行っている。