『北斗の拳』原作者が、厳しい世の中で生き抜くための心構えを説く。著者自身の仕事に追い詰められて、逃げ出した体験などを語りながら、その生きざまを紹介しています。
■「下流」という可能性
社会は平等でも公平でもない。歴然と存在する格差の中で人間は生きている。逃げ場などどこにも無い。戦わなければ、格差の中に埋没していくだけなのだ。
「下流」、卑下しているのではない。むしろ可能性をいっているのだ。失うものは何もない。最初から何も持たされてはいないのだから。
「上がるしかない」、これは下流の特権なのだ。たとえ、それが一瞬の煌めきでも。
■生きていればいい
どんなことをしても、生きていればいい。いま、日本で年間3万人が自殺しているというが、死んじゃダメだ。死のうって思うほどの気力があるなら、しがみついてでも生きている方がいい。
何にもなくなったとしても、日雇いに行って数千円稼いで、稼いだカネを持って競馬場に行ってごらんよ。自分のすべてを賭けると楽しい。競馬場じゃなくても、自分で稼いだわずかのカネを握りしめて、キャバクラでもイメクラでも行って、「あ、楽しい」と感じたら、それだけで「生きててよかった」って思える。
死ぬ覚悟があるんだったら、思いっきりはしゃぐといい。リストラとかで死のうと考えてた事がバカみたいに思えてくるはず。仕事を失い、どん底に落ちても死ぬ必要なんてない。仕事を選ぼうとするから絶望するのであって、カネを稼ぐ手段はいくらでもある。求人票を睨めっこして、まずはメシを食う事を考えよう。それでメシを食ったら銭湯行って、ホッピー一杯飲んで、余ったカネで博打を打てば、「生きてる〜」って実感すると思う。「明日も働こう」って気になる。
なまじっかプライドを優先すると、自分を守ろうとして動けなくなるけど、意地を出して「ここで死んでたまるか!」って割り切れたら何でもできるもんだ。そこがプライドと意地の違い。あぶく銭で食う高級寿司と、泥水舐めて稼いだカネで飲むホッピー一杯だったら、ホッピーの方がおいしい。生きている喜びが違う。
とにかく死んじまったら何もできない。
著者 武論尊
1947年生まれ。漫画原作者 代表作に『ドーベルマン刑事』、『北斗の拳』、『サンクチュアリ』、『HEAT-灼熱-』など。 中学卒業後、航空自衛隊に入隊。7年間在職し、除隊後に自衛隊時代の元同僚の本宮ひろ志の仕事場にアシスタントとして転がり込む。絵が全く描けず麻雀ばかりしていた時に本宮の当時の担当者から漫画原作者への道を勧められ、1972年に『週刊少年ジャンプ』掲載の『五郎君登場』でデビュー。
帯 漫画家 あだち充 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.2 | 1分 | |
仕事 | p.9 | 30分 | |
日常 | p.73 | 11分 | |
恋愛 | p.97 | 8分 | |
友情 | p.115 | 9分 | |
博打 | p.135 | 9分 | |
生きざま | p.155 | 17分 | |
おわりに | p.192 | 1分 |