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逆境から発想の転換が始まった

90年代半ばから2000年代初頭、アキレスの主力品群のジュニアスポーツシューズは、以下の要因から逆境に追い込まれていた。

①少子化による市場全体の縮小
②GMS(総合スーパー)等のPB製品、製造小売業(SPA)の参入
③「オシャレな靴」への嗜好の変化
④中国生産シフトによる価格競争

この状況を抜け出すには「変化への対応力」が必要だった。これまでの「生産者視点」から「消費者視点」への転換を図るため、99年にマーケティングを担当するポジションが設けられた。

消費者の好みと対比して自社製品に足りないものを考えたり、他社製品をみて「これはきっと伸びる」という時の感覚は、売り場の新品を見るだけでは育たない。実際に使用されている靴を何十万足も見る必要がある。開発チームのまとめ役となった津端は、これまで13年間地道に子ども靴を撮り続け、トレンドの変化をキャッチした。

前代未聞のアイデア

『瞬足』が多くの支持を得る事ができたのは、「すべての子どもの心に訴える」事を目指したコンセプトがあるからだ。瞬足は足の速い子のために作られた靴ではない。

瞬足は本格的なスポーツ仕様ではなく、校内で履く上履きに対する、外履きという位置づけである。もしスポーツに特化していれば、運動が苦手な子どもは「自分には関係ない靴」だと思っただろう。

通学履きに「左右非対称」というアイデアは突然降ってきた。サッカー、野球用の靴など、何かに特化しようとすると、それ以外の子どもをターゲットにする事ができなくなる。その時「みんなが喜ぶものを作ればいい」と考えた。そこで「子どもの生活シーン」をとことん洗い出してみる事にした。やがて「運動会」について強い思い出を持っている事に行き着いた。

運動会が楽しくなるような付加価値を付ける。この方向性を得て「転ばない靴を作ろう」と目標が決まった。昨日より速く走れる自分に気付く。「すべての子どもの背中を押せる靴」を作りたいと考えた。

新しいものを生み出す時は苦労の連続

瞬足が売り場に出るまでの半年間は、苦労の連続だった。

①走る時だけ左側のグリップが強くなる設計
スタッドレスタイヤから妙案が浮かぶ。柔らかめのゴムを靴底に使って、その中にスパイクを仕込む。荷重がかかってゴムの厚みが減った時に地面を掴めるようになる。

②工場が見つからない
これまでの靴は例外なく「片足をつくり、それを反転させる」方法で製造されてきた。左右非対称の場合、製造コストが高くなってしまう。最終的に1つの工場だけが製造を承諾してくれた。

③大手小売店が取り扱ってくれない
大手GMSなどは、売れるかわからない商品を取り扱ってくれない。結果的に「街の靴屋さん」からデビューし、そこから火がついた。