組織、人事分野のコンサルタントである著者が、いま職場で問題となっている「閉塞感」の正体を解き明かす。どうすれば、苦しい立場にいるビジネスパーソンは救われるのか。
■4割の人が閉塞感を感じてる
最新の調査の結果では、今の職場で「閉塞感を感じている」ビジネスパーソンは40.2%にのぼる。その半数以上が「会社や事業の先行き不透明感」を閉塞感の理由として挙げた。
現在の閉塞感は、バブルが崩壊して企業の成長が止まった後、急激な変化と熾烈な競争に象徴される、新たな経済環境に直面した企業の中で起こっている。そして、職場には2つのカベがセットで立ちはだかっている。
■職場の閉塞感はどこからやってくるのか?
多くの会社・職場に共通する「閉塞感をもたらす要因」には、4つのケースがある。
①活躍の機会が閉ざされる
・上に人がたくさんいて昇進できない
閉塞感をもたらす要因の1つ目は「組織の目詰まり」である。要するに「上が詰まっていて昇進できない」という閉塞的な状況が発生している。その背景には「バブル期入社世代により中堅層以上が膨らんだ」社内人口構造、「低成長時代になりポストが増えていかない」という組織の事情、「一度昇格させた人をポストから外せない」という年功的な人事運用の実態、この3つの要因がある。
・蓄積してきた専門性が通用しなくなる
職務の範囲を細分化・深化させる事には、個人のキャリアを閉塞的な状況に押し込めてしまうデメリットがある。事業環境や競争戦略の変化によって、組織のくくり方が変われば、それまで要求されてきた専門性の深め方・広げ方のパターンも変わってしまう。
②儲からない事業構造から抜け出せない
どんなに優れたビジネスモデルであっても、いずれは成熟期を迎え、衰退していく。その過程では、工場などの拠点閉鎖に伴い、必然的に余剰人員が発生する。会社としては、事業再編を円滑に進めるため、一般的には余剰人員の退職を促したいと考える。
③雇用機会さえもが消えていく
整理解雇の対象になってしまった社員は、仮に再就職に成功したとしても、年収の大幅なダウンは避けられない。会社に残ったとしても残らなかったとしても、厳しい状況に押し込められていく。
④低い階層から抜け出せない
日本企業の多くは新卒を一括採用して社内育成するという慣習を変えておらず、中途採用者は内部で育成できない専門人材にかぎる、という会社が多い。そのため成長意欲が高く転職を続ける人よりも、新卒で「いい会社」に入って転職しない人の方が、職業能力の面でも所得の面でも報われる、という矛盾が起きている。
著者 草間 徹
クレイア・コンサルティング 代表取締役 トーマツコンサルティング(パートナー)、アーサー・アンダーセン(ディレクター)を経て現職。 経営改革、組織風土改革、企業統合など、企業が危機に直面した状態での人事・組織マネジメントのコンサルティングを得意分野。HRM全般に関するコンサルティング実績を活かして、執筆、インストラクター、講演等も行なう。
日経ビジネス Associe (アソシエ) 2013年 09月号 [雑誌] |
週刊 ダイヤモンド 2013年 7/13号 [雑誌] 三省堂書店営業本部課長 鈴木 昌之 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 4分 | |
第1章 今そこにある閉塞感 | p.13 | 44分 | |
第2章 職場の閉塞感はどこからやってきたのか | p.75 | 29分 | |
第3章 社員を蝕む閉塞感の構造 | p.115 | 51分 | |
第4章 閉塞感に立ち向かう―カベを乗り越えるために | p.187 | 46分 |