「仕組み化」が実行力を生み出す
38億円の赤字、2001年8月中間期、無印良品に衝撃が走った。この時、まず会社の業績が悪化した原因を分析し、6つの内部要因を挙げた。①社内に蔓延する慢心、おごり、②急速に進む大企業病、③焦りからくる短期的な対策、④ブランドの弱体化、⑤戦略の間違い、⑥仕組みと風土を作らないままの社長交代。
問題は、それを解決する実行力である。問題の構造を見つけたら、それを新たな仕組みに置き換える。そうする事で組織の体質は変わり、実行力のある組織になる。仕組みづくりとは、会社の風土、社風を変える試みでもある。社員一人ひとりのモチベーションを上げ、能力を最大限に引き出し、組織を強くするのは、劇的な改革ではない。必要なのは、地道な仕事の習慣を根付かせることだと断言できる。
現場の自発性を育てる仕組み
今の時代のリーダーに必要なのはカリスマ性ではなく、現場でも自由にものを言えるような風土をつくり、その意見を仕組みにしていく事だ。現場の自発性が育てば、自ずと実行力のある組織になっていく。
・売れ筋捜査
無印良品では、前年のデータをもとに、売り場の在庫管理と自動発注を連動させる仕組みを作った。但し、コンピュータだけに頼っていると、キャンペーンや特売、気温の変化などに対応できない。そこで売り場からの意見で「売れ筋ベスト10の商品を常に店で把握し、その商品は目立つ場所に陳列する」という仕組みにした。
・「一品入魂」
現場からのアイデアで「店のスタッフ一人ひとりが売りたい商品を一つ決めて、お試し価格として2割ほど安くして売る」という手法を取り入れた。スタッフが自分でコメントを書いてアピールするので、自然と力が入る。
「仕組み化」で小さなことを徹底する
業界の最前線を走り続ける企業に共通している事は、非常にシンプル。「挨拶をきちんとする」「ゴミを見つけたら拾う」「仕事の締め切りを守る」といった、人としての「基本のき」が社員に浸透しているかどうか。
結果を出せないチームの根本的な問題は「能力」ではない。社員同士のコミュニケーションや、信頼関係の希薄さが不振要因になっている場合が多い。そのような状態では、どんな改善策を講じても、勝てるチームにはならない。毎日小さなこと、例えば挨拶などを徹底して実行するしかない。
「君はやればできるんだ」という精神論では、部下の性格は変わらない。人は行動を変えれば意識も変わる。そのために基本の仕組みをつくり、個人で解決できるようなプラスαはそれぞれの判断に委ねるという、個性を活かす余地も残しておく。