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2013/07/25更新

「幸せ」の経済学 (岩波現代全書)

172分

8P

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格差の拡大が幸福度を低くする

経済学では、所得が上がり、消費が上がると効用も上がるというのが前提だった。しかし、「世界価値観調査」を見ると、経済が豊かであるという事は幸福の第一条件になっているとはいえ、日本やフランス、旧西ドイツは、デンマークやスウェーデン、スイスに比べると幸福度は低く、これは経済の豊かさだけでは、その国民の幸福度は測れないという事を示している。所得が高い先進国でも、所得が高くなるにつれて必ずしも比例的に幸福感が増しているようではない。

この事を説明してくれるのがイースタリングの仮説で、第一が「相対所得仮説」、第二が「順応仮説」である。

①相対所得仮説
自分の所得を周りの人と比較して、自分の幸福度、不幸度を感じるというもの。つまり、所得格差の大きい国ほど国民の生活満足度が低くなる可能性がある。そうすると、格差の下にいる人は、満足度が下がる。

②順応仮説
人は条件の変化にすぐに対応するというもの。仮に去年の所得よりも今年の所得がかなり増えたとしても、その時、幸福度は高まるがすぐに慣れてしまう。

格差の拡大によって、相対所得仮説では貧困にいる人の数が増えて、その人々の不幸度が高まった事になり、他方、格差の上方にいる人は、所得が昨年より増加しても昨年の事は忘れて、所得の増加が当然と思って、あまり幸福度を感じない。

一人当たりのGDPは高くなっているから、国民の幸福度は上がるだろうという予想がはずれ、生活満足度、幸福度が落ちている事実を、この2つの仮説で説明できる。

幸せの国から学べ

国際比較の研究において国民の幸福度が世界第一位とされる事の多いのが、デンマークである。デンマークは自由・平等・連帯の意識が高く、福祉制度を充実する事に熱心だった。国民は所得格差が小さいながらも平均としては比較的高い所得を得るようになるし、福祉が充実している事から安心して生活できるという認識を持てるので、大半の国民が幸せと感じる国となった。

2005年度の国勢調査で、97%の国民が「自分は幸せである」と感じている事が報告されたのがブータンである。ブータンの貧困率は当時で23.2%の高さであり、1人当たりGDPも1416ドルという低い生活水準になる。重要な事は、国民の大多数がチベット系の仏教徒で「良い事をすれば良い結果が返ってくる」といった倫理的な思考を大切にすること。さらに、ブータンの地方では情報が乏しく、外国の人々がいかに豊かな消費生活を送っているかを知らない、という事で物質的な豊かさに無関心である、という国情が無視できない。

デンマークやブータンから学ぶ事は多い。社会保障制度の重要さ、人々の平等意識の大切さ、人々の心や精神のこと、家族やコミュニティにおける絆が特に重要という事である。