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2013/07/15更新

経済は「競争」では繁栄しない――信頼ホルモン「オキシトシン」が解き明かす 愛と繁栄の神経経済学

316分

2P

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信頼の起源と進化

あらゆる動物が水の中で暮らしていた頃、主なストレスホルモンは闘争・逃走反応を促す化学物質だった。そのせいで動物はたえず互いに相手を警戒する。それでは、生き物はどうやって一緒になり、生殖すれば良かったのか? それには、相手を信頼しても大丈夫だと伝える化学伝達物質が必要だった。それがオキシトシンの祖先だ。

人間の場合、情動や社会的な行動と結びついている脳の領域には、オキシトシン受容体がびっしり並んでいる。ポジティブな社会的刺激によってオキシトシンの分泌が促されると、今度はこのモラル分子によって、快感を生じさせる他の2つの神経伝達物質「ドーパミン」と「セロトニン」の分泌が誘発される。

セロトニンには、不安を減らして気分をよくする効果があり、ドーパミンは目標志向行動や衝動、強化学習に関わっている。この回路があるからこそ、私たちは道徳的な行動を繰り返すのだ。信頼がさらにオキシトシンの分泌を促し、一層の共感を生み出す。これこそが「善循環」と呼ぶ行動のフィードバック・ループだ。

攻撃性と共感

人間はストレス・レベルが高いとオキシトシンの分泌が妨げられる。自分自身が必死に生き延びようとする時には、利他的にさえなるオキシトシンは邪魔になりかねないからだ。

オキシトシンの分泌を妨げる化学物質の1つがテストステロンである。これは男性が女性の10倍多い。テストステロンは運動の遂行能力を著しく向上させる。人類は進化の間、生存を維持するために2本立てのアプローチをした。暴力も競争も攻撃も可能であると同時に、絆を結び、思いやりを発揮する事もできるのだ。

経済は「信頼」で繁栄する

取引はオキシトシンの「善循環」を支えるだけでなく、親族や友人といった狭い範囲の外側にまで広げる。そして、道徳的な行動は、取引の効率と収益性を高める。より大きな経済的パイ、つまり繁栄を全員がそれなりに共有できれば、それがストレスを減らし、信頼を増し、その結果、さらにオキシトシンが分泌され、さらに「善循環」が続く。

市場を道徳的に保ち、道徳的な市場が提供しうる最大の経済的利益を引き出すために欠かせない要素は、次の4つである。

①つながり:「つぶやく」だけでもオキシトシンは増える
②信頼:匿名性を排除し、競争と協力のバランスをとる
③お金ではなく、サービスと品質の重視:長期的な判断軸を持つ
④万人の利益:勝者総取りのゼロサムゲームから抜け出す

長期的に栄えるためには、どんな市場も、信頼とオキシトシン分泌と互恵主義の「善循環」を維持する、公正で明確で施行可能な取引の規制を必要とする。