20%ドクトリン
20%ルールの精神に従って行動を起こしている企業や団体には、共通の方針がある。
①創造性を発揮する自由を与える
80%の時間を支配している管理体制からスタッフを解放することで、通常業務の範囲外にあるアイデアや、普段は行き場を失うようなアイデアを具体化する仕組みもでき上がる。
②情熱を理解する
20%プロジェクトなら、スタッフに自分が共感するプロジェクトを担当させる事もできる。これは士気の向上とプロジェクトの成功につながる。
③製品は悪い方がいい
重要なのは、とにかく製品を形にして送り出すこと。改善は後からいくらでもできる。
④再利用する
既存の製品やテクノロジーを再利用し、プロジェクトを少ない作業で立ち上げられれば優位に立てる。
⑤素早いイテレーションを繰り返す
成功する20%プロジェクトは、イテレーション(短い間隔で改善や機能追加を繰り返す反復型の開発サイクル)を使って社内で雪だるま式に成長し、成功への道を転がっていく。改善するたびに議論を呼び、ユーザーの注意を引き、支持者の獲得につながる。
⑥学んだ教訓を伝える
どんな20%プロジェクトも、いかにして会社を巻き込むかが課題になる。サイドプロジェクトを成功させる者は、常にそのプロジェクトを誰かに売り込み、必要な資源を得ようとする。
⑦部外者を取り込む
サイドプロジェクトは外部のアイデアを歓迎する。
イノベーションをもたらそうとするようなプロジェクトの立ち上げには、企業の組織図に切り込み、内部の指揮系統全体からの支持を引き出さなければならない。その時、20%ドクトリンが助けになる。
Gメールとアドセンス
ポール・ブックハイトが考案した「アドセンス」と呼ばれる広告システムは、現在グーグルに年間100億ドルほどの収益をもたらしている。それと対をなすGメールは、数千万のユーザーを誇るまでに成長した。
ブックハイトは20%プロジェクトの根幹をなす考え方を大切にしていた。それは、他人の問題を解決する製品をつくるには、まず自分の問題を解決する製品を作れなければならないという事だ。Gメールとアドセンスの開発は、ブックハイト自身の悩みを解決する取り組みだった。彼は、自分の作り出したもので100人のグーグル社員を満足させるという目標を定めた。
最初のGメールは、最低限の機能しか果たさない、相当にひどい代物だった。それでも彼はそれを同僚たちに見せて回り、次々に不満に思う要素を取り除いていった。膨らむ一方のGメールの稼働コストを捻出するために「アドセンス」を作った。グーグルの上層部はすぐに、アドセンスを最優先案件にする事を決めた。