ヤマト運輸の開発した「宅急便」は新しい市場を創り出してきた。そして宅急便は常に進化し続けてきた。宅急便誕生から37年、ヤマト運輸はこれまでどのような戦略をとってきたのか、現社長が新しい商品を創るヒントを語っています。
■需要創出のサイクルを回す
「宅急便」は、2代目社長の小倉昌男が生み出し、2013年で37年を迎えた。宅急便の登場で、日本人の生活は劇的に変わった。それは単に個人の荷物のやり取りが便利になっただけではなく、宅急便が拡大してインフラとなる事で、通販業界など他産業の成長も促した。つまり、ヤマトグループにとって、イノベーションとは需要創出の事に他ならない。
「需要創出」の事例に「ゴルフ宅急便」がある。お客様のゴルフバッグをゴルフ場まで運ぶサービスだ。今までにないサービスだったので需要は広がった。すると、我々の成功を見た同業者も同じようなサービスを始めてきた。その結果、競争環境が生まれ、需要は確実に全国へと広がった。その中でヤマト運輸は配達の品質にこだわり、便利なサービスを加えて、ゴルフ宅急便でトップシェアになった。
①オンリーワンの商品を生み出す
②ライバルの参入を受け入れ、競争環境を生み出す
③拡大する市場の中で圧倒的なナンバーワンになる
④最終的にデファクトスタンダード(事実上の標準)となる
つまり、この一連の流れが、需要創出である。
「宅急便」でヤマト運輸が圧倒的なナンバーワンになる事ができたのは、需要創出のサイクルを作り続けたためである。
①オンリーワンの商品を生み出す
・「解決策がなくて困っている」というお客様の声から潜在需要を見つける
・潜在需要が見えたら、対象とするセグメントを絞り込む
・サービス開始当初から利益を確保しようとせず、まず需要を拡大し利益を後で得る
②ライバルの参入を受け入れ、競争環境を生み出す
・競争相手が増えることで、需要が広がる
③拡大する市場の中で圧倒的なナンバーワンになる
・市場が成長している段階では商品単体の機能を差別化する事で競争に勝つ
・市場が成熟した段階では機能を組み合わせるなどして、競争の土俵を変える
④最終的にデファクトスタンダード(事実上の標準)となる
・デファクトスタンダードになった後はインフラをプラットフォーム化して広く開放し、他社との協業によって新しいサービスを生み出していく
著者 木川眞
1949年生まれ。ヤマトホールディングス社長 大学卒業後、1973年に富士銀行(現みずほ銀行)に入行。合併後、みずほコーポレート銀行の常務を経て、2005年ヤマト運輸に転じる。2011年ヤマトホールディングス社長に就任。
日本経済新聞 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊 ダイヤモンド 2013年 9/21号 [雑誌] 早稲田大学ビジネススクール教授 平野 雅章 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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プロローグ 「サービスが先、利益は後」の継承者 | p.2 | 11分 | |
1時間目 「宅急便」のDNA 需要創出のサイクルを回す | p.37 | 16分 | |
2時間目 競争が広げる市場 戦う土俵を変えて勝つ | p.75 | 12分 | |
3時間目 需要創出のゴール なくてはならない「土台」になる | p.105 | 11分 | |
4時間目 ネットワークの再構築 モノ作りや農業は物流でさらに輝く | p.131 | 12分 | |
5時間目 改革を生む組織作り 経営理念は行動で示す | p.161 | 6分 |