世界市場の出現
90年代半ば以降、ISOやWTOなど、ビジネスルールや規約・規格の世界標準が整っていった。これらは、自由でフェアに「世界市場」に参画し、競争するためのルールづくりである。この特徴は、一元化された巨大な市場とそれを俯瞰する視点だ。国内市場は世界市場の一部に過ぎず、世界全体の把握が出発点となる。
グローバルモデルに変わると、要求される人材も変わるし、営業のスタイルも変わる。しかし、日本は「高品質の製品を作って海外に出せばよい」という発想から抜け出せなかった。ある国、民族を、日本の文化のメガネを通して判断してしまう。
グローバル時代に必要な価値観
グローバル化によって、世界の価値観は次のように変わった。
①文化・民族のアイデンティティ
自由諸国対共産圏という冷戦体制が崩壊した後、重要な価値として浮かび上がったのが、民族のアイデンティティ、文化のDNAだった。
②タテの物差しからヨコの物差しへ
権力や地位、財産によるタテの物差しはあまり意味を持たなくなり、知識、ノウハウ、経験によるヨコの連帯が重要になった。
③ハードパワーからソフトパワーへ
軍事力や富の力のような制圧的なハードパワーではなく、文化や価値観、政策の魅力などソフトパワーが重要になった。
④正反対の価値の同時導入
正反対の価値を持つ軸を同時に指標として使うこと。二元的発想ではなく、相反する価値の共存という形で、思考や行動を進める事ができる。
⑤国際規約、ルールの一元化
ルールが世界レベルで統一されたという事は、ルール違反が一層厳しく罰せられるようになってきているという事である。
⑥包含の原理
地球上に住むすべての人を「地球家族」とみなすような、多様性を受け入れる心が必要である。
⑦知識労働者
単に与えられた事をこなすだけでなく、情報に最大の付加価値をつけられる事が求められるようになった。
⑧市場原理と人道的規範原理
世界市場でフェアな競争をするモデルと社会貢献型のソーシャルビジネスモデルの2つを使いこなす意識が求められる。
世界で戦える人材の3つの条件
グローバル人材と呼べる人が持つ、共通の要素は次の3つに集約できる。
①世界「全体」としっかり向き合う
②世界を「くぐる」(時間軸・空間軸に沿って世界を体験する)
③どのように世界を変革したらいいか、はっきり見える
グローバルビジネスを行う能力は、ルールの軸に沿った理解(グローバルスタンダード)と、多様性の軸に沿った理解(現実の市場)を同時に推進し、全体最適の形でスピーディに成果を出す能力である。
グローバル時代には、マトリックス思考(正反対の価値を持つ軸を同時に指標として使う多元的な発想)で全体最適の行動をとる必要がある。