世界のトップ企業で認められたグローバル教育を行う著者が、日本のグローバル化に必要なものは何かを説く。
■なぜ日本はグローバル化に波に乗り遅れたのか
なぜ、日本はグローバル化の波に乗り遅れてしまったのか。1つは、グローバル化のきっかけとなったソ連法崩壊とほぼ同時にバブル崩壊という事件が起きたため、日本人の目が国内問題に向いてしまったこと。そのため、世界の大変動を見損なってしまった。
そもそも日本では、グローバリゼーションという言葉の定義が極めて曖昧である。それが、日本が国を挙げてグローバリゼーションに対応できない原因の1つだ。日本人に多い誤解が、グローバリゼーションと国際化を区別せずに使っていること。
・インターナショナル
「国」単位で国と国の関係を中心に世界を見る発想、視点、動き
・グローバル
「地球」単位で世界全体を見る発想、視点、動き
80年代に日本が成功を収めながら、その後つまずいた要因こそが、インターナショナルからグローバルへのモデルチェンジに失敗した事にある。
国際化とは、日本対外国という二元的発想に基づき、日本国内のビジネスを海外に拡張するという姿勢を特徴としていた。これにより、日本製品は世界に溢れた一方、貿易戦争や本社・子会社間の対立など、様々な摩擦と対立を引き起こした。
グローバルビジネスを行う能力は、ルールの軸に沿った理解(グローバルスタンダード)と、多様性の軸に沿った理解(現実の市場)を同時に推進し、全体最適の形でスピーディに成果を出す能力である。マトリックス思考で全体最適の行動をとる能力と言い換えられる。
この能力を身につけるためには、5つの「道」を「くぐる」という体験が必要である。
①グローバルマインドを持つ
グローバルマインドとは、世界全体としっかり向き合い、すべての現実を受け止める「最大スケールの心」である。DNAと基本的人権を持つ対等で平等な存在として、世界のすべての人を見ることだ。
②「文化の世界地図」で、世界を俯瞰的に見る
全世界をいち早く把握するためのツールが「文化の世界地図」である。世界を俯瞰するために必要な視点は「世界は大きく3つのコード(価値体系)に分けられる」ということだ。
1.法的規範:ルールが社会の中心。北米、英国、北欧諸国など
2.道徳的規範:人間関係が社会の中心。アジア諸国、南米、南ヨーロッパなど
3.宗教的規範:神の教えが社会の中心。中東諸国
③倫理とリーガルマインドを強化する
日本人は自分たちがモラルコード圏にすっぽり入っている事を自覚する必要がある。そして、世界トップレベルの競争力を勝ち得るためには、「倫理」と「リーガルマインド」2つのソフトパワーを身につける事が近道である。人間として何が正しいのかという時代・環境を超えた原理・原則である倫理と、それにしっかり裏打ちされたリーガルコードとの組み合わせこそがハードパワーに対抗する唯一の手段だ。
④日本のDNAを磨き、日本型グローバル人材を目指す
世界共通の価値の軸と民族の伝統である日本のDNAの軸、この両方をしっかり持つ事が、真のグローバル人材である。日本の伝統、固有の価値は何かを考え、自覚追求し、それを磨いていく。それを世界に向かって発信していく必要がある。
⑤21世紀の学習方法に切り替える
「世界全体」としっかり向き合うには、今までのような断片的な知識の寄せ集めをする学習方法では間に合わない。グローバル時代の新しい学習方法は4つのステップで行う。
1.心の中に世界全体を設定し、常に肉眼と心眼の両方で世界全体が見えるようにする。
2.世界を俯瞰した時、「文化の世界地図」の俯瞰図がしっかり見えるようにする。
3.地図の中にビジネスの世界(自社の歴史、プロジェクトなど)を導入する。
4.世界のニュースを伝える日刊紙を2紙ほど購読し、スクラップブックを作る。
著者 渥美 育子
1941年生まれ。社団法人グローバル教育研究所理事長 株式会社グローバル教育社長 大学卒業後、カナダブリティシュ・コロンビア大学、トロント大学、ケンブリッジ大学などで学び、その後、ウェールズレー大学、ハーバード大学ラドクリフ・バンテイング研究所等で「文化の世界伝播についての研究」に従事。 1983年にボストン郊外で米国初の異文化マネジメント研修会社を設立。「タイム」誌に紹介されるなど一躍話題となり、数多くのグローバル企業で人材育成や世界市場戦略策定を担当。 2007年に帰国後は、多くの日本の大企業においてグローバル人材教育を担当する一方、子どものグローバル教育の普及にも尽力している。超党派政策シンクタンク「国家ビジョン研究会」教育分科会副会長。
日経ビジネス |
週刊 ダイヤモンド 2013年 9/14号 [雑誌] |
グローバルビジネス学会ブログ 元ブリテイッシュテレコムジャ パン会長 北里 光司郎 |
帯 アフラック最高顧問 大竹 美喜 |
帯2 世界地図社社長 松岡 功 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.3 | 4分 | |
第1章 日本人女性起業家、米国で躍進する―「異文化マネジメント研修」の第一人者として | p.19 | 8分 | |
第2章 グローバリゼーションとの出会い、そして衝撃 | p.33 | 11分 | |
第3章 「文化」という要素から世界が見えた!―「グローバルビジネス」を読み解くツール | p.51 | 11分 | |
第4章 本当の「グローバル化」を理解する―視点・発想をコペルニクス的に転回せよ | p.69 | 16分 | |
第5章 グローバルマインドを心に設定する「道1」 | p.95 | 16分 | |
第6章 “文化の世界地図”で、世界を俯瞰的に見る「道2」 | p.121 | 22分 | |
第7章 倫理とリーガルマインドを強化する「道3」 | p.157 | 10分 | |
第8章 日本のDNAを磨き、日本型グローバル人材を目指す「道4」 | p.173 | 14分 | |
第9章 二一世紀の学習方法に切り替える「道5」―一級の国際プレーヤーになるために | p.197 | 13分 | |
おわりに | p.219 | 4分 |
異文化の波―グローバル社会:多様性の理解 [Amazonへ] |
フラット化する世界 [増補改訂版] (上) [Amazonへ] |
2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する [Amazonへ] |
西欧キリスト教文明の終焉―日本人と日本の風土が育んだ自然と生命の摂理 [Amazonへ] |
知識創造企業 [Amazonへ] |