アイドルは不況に強く、好況に弱い
景気が回復すると、それまで内向きだった消費者の意識が積極的に外に向かうようになり、求められるアイドル像もまた変化していく。「景気回復とアイドル衰退」という因果関係は、これまでのアイドルの歴史が証明している厳然たる事実である。
芸能界、特にアイドルの世界では「アイドルは不況に強く、好況に弱い」という定説がある。「おニャン子クラブ」「モーニング娘。」「AKB48」、この3組の共通点は、いずれも日本経済の不況期に誕生、活躍したグループということ。
おニャン子クラブ(85年:円高不況 )
モーニング娘。(97年:拓銀、長銀、山一證券倒産)
AKB48(05年:景気回復期に低迷。09年:リーマンショック以降に大ブレイク)
一方、好況期には、疑似恋愛の対象となるアイドルより、生身の人間、本物の恋人へと関心が向かっていきがちである。より強い刺激を求めるようになり、イケイケのお色気路線が流行する。バブル期に台頭したのは、「セクシーアイドル」だった。
アベノミクスでAKB48は衰退する
「デフレに強いアイドル」の象徴的存在だったAKB48だが、ついに暗い影が差し込み始めている。それは「デフレ脱却」という兆候である。
アベノミクスによるデフレ脱却 → 日本経済の復活 → 好況期到来 → デフレカルチャーの衰退 → アイドル産業の沈静化 → AKB48の消滅
景気が上向いてくると、それまで「あまりお金を使わないようにしよう」と考えていた人たちが、その反動からリアルな消費に走るようになる。リアルな消費が加速していくと、AKB48のような物語消費は影を潜めていくようになる。
最近、壇密が人気となっていのは、まさにそのはしりかもしれない。これまでの内向きな発想ではなく、かつてのバブル期のセクシーアイドルのような活躍を見せているのが、壇密なのである。
AKB48の出口戦略
AKB48には消滅の兆候がすでに表れている。これまでには考えられなかった「綻び」が目につくようになってきた。河西智美の「手ブラ写真集騒動」、峯岸みなみの「丸刈り謝罪騒動」など、メンバーのスキャンダルが続いている。
AKB48の今後を考える時、ヒントになるのが「モーニング娘。」だ。かつて「モーニング娘。」も現在のAKB48のような状況にあったが大失速した。その苦い経験の中で「モーニング娘。」は今も存続し、「ハロプロ」というプロジェクトによって、その卒業生たちの多くが現在もタレントとして活躍している。これは、ある意味「学校」のような役割を果たしている。
「モーニング娘。」あるいは「宝塚」のような事例は、AKB48のソフトランディング化にふさわしい戦略である。