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2013/07/12更新

日本企業は何で食っていくのか (日経プレミアシリーズ)

192分

8P

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日本企業は何で食っていくのか

①電力生産性で食っていく
2030年には国内電力供給の50%を原子力で賄うという政府のエネルギー計画のもとで動いてきた国が、福島で深刻な原発事故を経験してしまった。当面の電力危機が回避できたから将来も大丈夫という訳ではない。だからこそ、電力効率の高い産業構造への転換が不可避である。

産業間の電力生産性の観点から考えれば、機械産業や食品産業へのシフトの可能性が想定できる。もちろん、電力生産性の低い鉄鋼、非鉄金属、化学工業といった産業の中でも、別の技術優位性を持っている産業なら、国際競争力はあり得るが、今後は、付加価値の高さだけでなく、電力使用量の相対的低さも理由に加わる。

②ピザ型グローバリゼーションで食っていく
電力危機がもたらす1つの大きな産業構造的な変化は、国際分業構造の変化である。国際比較では日本企業の海外展開はそれほど高い水準ではない。日本企業が直接投資にためらいがちな理由は、空洞化の危険にある。国内生産維持と海外強化の両立を、どう実現するのか。この答えの中心になる概念が「ピザ型グローバリゼーション」である。

ピザは、全体がつながりかつ真ん中にトッピングが載っている。つまり、国内の産業は完全な空洞にならず、一番おいしい部分が国内に残る。1つの企業の生産工程の流れを細分化し、どこを国内で行い、どこを海外のどこの国に立地させるか、という複雑な国際分業を志向するのである。

③複雑性産業で食っていく
日本国内でこれから中心的になっていくであろう産業分野のキーワードは「複雑性」である。その理由は、複雑な製品や部品には、実に多様な産業分野の技術蓄積が必要となるから。さらに、日本の組織の仕事のスタイルが貢献する。複雑な製品は、しばしば高付加価値につながりやすい。だから価格競争にもなりにくい。

④インフラで食っていく
日本の産業集積は、日本以外の国々のために誰でも使えるオープンな基盤として機能する。こうした日本企業の役割ゆえに、東アジアの国々の企業が、日本企業を一種のインフラとして利用し、需要が増えていく。

⑤中国とともに食っていく
特にピザ型グローバリゼーションの重要なパートナーとして中国という存在は大きい。ASEANとバランスをとりながら、中国との国際分業の深化を図ることで、日本の産業構造を決めていく。

⑥化学で食っていく
物理学は基本原理を理解すれば、あとは論理で解決できる事が多い。それがエレクトロニクス産業で新興国が急速なキャッチアップをしやすい本質的な理由なのではないか。一方、化学は単一の原理を学習すればあとは論理で解決できるという世界ではない。だからこそ、東アジアの企業もなかなか追い付けない。