売上不振にあったマクドナルドをV字回復させた原田CEOの経営論。「100円メニュー」「クォーターパウンダー」「マックカフェ」など、様々な経営戦略の根本的な考え方がわかります。
■「らしさ」から逸脱するな
企業というのは「らしさ」を忘れて不振に陥り、「らしさ」を取り戻して復活する。当時、日本でマクドナルドが苦戦していた理由は「健康志向が台頭したこと」でも「ハンバーガーに対して消費者が飽きたこと」でもない。「マクドナルドらしさを失ったこと」にあった。
「らしさ」から逸脱する取り組みをすべきではない。例えば「消費者に健康志向が高まっている」と聞けば、サラダだ、オーガニックだ、低カロリーだとやる。でもそれらは「マクドナルドらしさ」からは逸脱している。
「マクドナルドらしさ」とは何か。それは、アメリカンテイストのボリューム感あるハンバーガーの味や、機能的で清潔な店舗、スピーディーかつ温かなサービスにある。その根底にあるのがQSC(品質、サービス、清潔さ)だ。就任当時、社員に対して「まずQSCの向上のみに専念しろ」と言った。
■マーケティングの要諦
できない理由をデータで証明するのは簡単だ。先入観を捨てて、現場に足を運ぶ。そこで商売の「におい」を嗅ぎ取る。そのにおいを基に、新しい価値を生み出す方法を考え抜いて、「これだ」というものが出来上がったら、あとは信じる。データは、その成否を検証するためにあるものだ。
少子高齢化とか健康志向とか言われる時に、あえてボリューム満点のハンバーガーをぶつける。その理由は単純な話で「驚かせたかった」ということ。消費者の心を引くために大事なのは、いい意味でお客さんの期待を裏切ることである。
しかし、「驚かせる」ような新商品を出し、爆発的にヒットさせても、それだけでは儲からない。消費者の認知を集めるためには、大きなプロモーションコストがかかるからだ。
では、なぜ奇抜な新商品を出し続けるのか。それは、その集客力でキャッシュカウを育み続けるためである。キャッシュカウとは、広告宣伝にコストをかけなくても、安定して売れ続ける営業利益率の高い商品のこと。マクドナルドでは、ビッグマックがそれに当たる。
新デザイン店舗の出店、ドライブスルーの拡充、コーヒーの無料配布、様々な手を打ち続けているが、いずれも「ビッグマックを買ってもらうため」と言うこともできる。
新たに獲得した顧客をどう維持し、その顧客満足からどう利益を生んでいくかを考える。したがって、メニューや価格などの商品政策は、ポートフォリオで考える必要がある。「驚かせる」ことで新たな顧客を誘引する商品もあれば、マーケティングコストゼロで利益を生むキャッシュカウもある。この組み合わせの結果、メニュー全体で利益を出す構造を目指す。
著者 原田 泳幸
1948年生まれ。1997年にはアップルコンピュータ日本法人の社長兼米国本社副社長にまで上り詰めたが、全くの畑違いに思われるマクドナルド(日本マクドナルドホールディングス)の社長兼CEO(最高経営責任者)に身を転じた。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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プロローグ 希望を乗せた「赤いバス」 | p.2 | 5分 | |
1時間目 「らしさ」の競争力 数字の羅列には「意味」がある | p.27 | 6分 | |
2時間目 戦略シーケンス 勝つための「順序」を考えよ | p.53 | 7分 | |
3時間目 マーケティングの要諦 顧客は驚きたがっている | p.83 | 6分 | |
4時間目 組織とリーダー 情熱には冷静を、冷静には情熱を | p.107 | 2分 | |
解説 マック再生は「戦略ストーリー」の傑作 | p.118 | 7分 |