英国の人気ブランド「Cath Kidston」は、どのようにして生まれ、そして成功したのか?創業者キャス・キッドソンがこれまでの歴史とその原点を語った1冊。
■デザイナーの道へ
英国の片田舎で育ったキャス・キッドソンは、ロンドンで生活を始める。掃除、犬の散歩、ギフトショップでの販売、とにかく何でもやったが、やがて長期的なキャリア探しに専念するようになる。その頃から、ジャンクショップで、小間物やヴィンテージファブリックなどを集めるようになった。
友人宅の装飾の手伝いを頼まれたり、アドバイスを求められるようにもなった。知り合いの女性が、アンティークファブリックを販売している会社を辞め、ひょんな事からその職を引き継ぐ事になった時、自分の一生の仕事について不意にイメージが湧いてきた。
尊敬するインテリアデザイナーのリストをつくって、1年かけて彼らに連絡をとり、インタビューを行い、人脈づくりに励みながらこの仕事でキャリアを積むチャンスを探した。
■Cath Kidstonはなぜ成功したのか
キャス・キッドソンが1993年に小さな店を始めた時、望んでいたのは他にはない「モダンヴィンテージ」なデザインの、実用的で楽しい生活雑貨を販売する、という事だけだった。
キャスが手がけたプリントアイテムは、特にスタイリストや小道具方から好評で、程なく、ファッションやデザインの世界の大物からも注目を集めるようになる。
しかし、メディアから評価され、注目度も高まっていった一方で、実際に販売で利益を出すのは生易しいものではなかった。開店から1年の売上高はたった5万ポンドしかなかった。資金繰りはいつも厳しく、キャッシュフローの見通しが暗ければ、節約のため自分で商品を作ることもあった。
常にお客さんにとって値打ちのあるものを提供する、という事を大切にしていた。顧客の基盤を拡大するため、布地に関しては利益を少なめに設定し、利幅を削り、販売量が増える事を期待した。そして、工場への注文量を増やして単価を下げるために、小さなブティックやリバティ百貨店などの大きな老舗に卸売をする事を決意した。
卸売が実入りの良いビジネスになる事に気付いたキャスは、積極的に新たな取引先の獲得を試み、販売拠点を拡大するために小さな展示会にも出展するようになる。
キャスはインテリアデザインの事業をたたみ、すべてのエネルギーをオリジナル商品とブランドスタイルの開発に注ぐ。それから間もなく、最初の本となった『ヴィンテージスタイル』が話題を集めた事で、より幅広い層にモダンヴィンテージのコンセプトが伝わった。
広告を出す事もなく、比較的短い期間で明確なブランドを確立したCath Kidstonは、今日では英国女性の半数以上に認知されている。
90年代前半、やっと不況が終わりかけていた時期にオープンした店がなぜ成功したのか?
ブランドの基本となるアイデアに、他にはない意外性や独創性があったから、というのが考えである。いくらマーケティングを行っても、アイデアに新しさやオリジナリティが足りなければ、うまくいかない。息の長い何かをつくり出したいのなら、寄り道せず、元々のアイデアに忠実であり続ける事が大切である。
著者 キャス・キッドソン
1958年生まれ。Cath Kidston 創業者、デザイナー 1993年、ロンドンに彼女の幼少期の記憶からインスピレーションがわいたというビンテージの生地、壁紙、中古家具などを扱う小さなショップを構えたことからキャリアをスタート。 ビンテージな趣きがありつつも、ポップで若々しい 花柄やドット柄のアイテムは日本でも大人気を博している。 創業哲学は、見る人を笑顔にさせるような、楽しく懐かしい雰囲気を持つカラフルなプリントや、現代の生活に合った実用的な日用雑貨を作ること。 この世界観を大切に守り続け ていることが、ブランドの成功へとつながっている。 現在では英国に約60店舗、さらに東アジアを中心に世界 各国に約50店舗を展開。16歳から65歳 までの英国女性のブランド認知度は5割以上にも上る。
著者 スー・チドラー
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 少女時代 | p.10 | 5分 | |
第2章 巣立ちのとき | p.20 | 6分 | |
第3章 コンセプト誕生 | p.32 | 3分 | |
第4章 創業者としての出発 | p.38 | 6分 | |
第5章 問題だらけの開店初期 | p.50 | 5分 | |
第6章 勝負のとき | p.60 | 3分 | |
第7章 ブランド構築 | p.66 | 5分 | |
第8章 アイデアとインスピレーションの源泉 | p.76 | 11分 | |
第9章 ビジネスの枝葉を伸ばすには | p.98 | 5分 | |
第10章 「子離れ」のとき | p.108 | 2分 | |
第11章 成長の痛み | p.112 | 3分 | |
第12章 再び成長軌道へ | p.118 | 3分 | |
第13章 熱狂のアジアに向かって | p.124 | 3分 | |
第14章 新しい時代の到来 | p.130 | 4分 | |
第15章 バラ色の未来へ | p.138 | 3分 |