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2013/06/27更新

戦略論の名著 - 孫子、マキアヴェリから現代まで (中公新書)

185分

3P

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マキアヴェリ『君主論』

マキアヴェリが生きた時代のイタリアでは、軍事紛争が絶え間なく繰り返された。そうした危機意識の中で、彼は君主として権力を獲得し、保持し続けるにはどのような力量が必要なのかを説いている。

そして、権威と恐怖による支配が国家を安定的に統治するには必要であり、それが脅かされた場合、敵対勢力への報復を行うための強力な軍事力をいかに整備して常日頃より備えておくべきか提言している。

マキアヴェリは、短期戦が望ましい事は述べたが、殲滅戦略や持久戦略のような、具体的な戦略論を展開した訳ではない。彼が論じたのは、戦略を策定し実行すべき君主のあり方であった。

クラウゼヴィッツ『戦争論』

クラウゼヴィッツの時代は、フランス革命からナポレオン戦争の時代である。彼はその影響下で、戦争に関してhowよりもwhatを徹底追求した。つまり「戦争とは何か」という本質論を展開し、西洋近代兵学を確立した。

『戦争論』では、まず「戦争とは、相手にわが意志を強要するために行う力の行使である」と定義され、次に暴力を行使する目的を考慮した場合、戦争は「他の手段をもってする政治的交渉の遂行である」と定義される。

つまり、戦争とは政治的目的を達成するための1つの手段に過ぎず、戦争は常に政治に従属するとした。しかし、戦争は勝利する事だけが重視されがちで、本来の目的が忘れ去られ、その規模が際限なく拡大してしまう。

核兵器の使用は相手を屈服させてわが意志を強要するための最高の「力の行使」といえる。ところが、相互に核兵器を使用する戦争は、戦争によって得られるいかなる利益も上回る破壊をもたらすので、政治目的の達成には寄与しない。従って核戦争は政治によって回避されなければならないものとなる。この事から、人々は『戦争論』を政治による戦争の制限を強調する理論として注目するようになった。

リデルハート『戦略論 - 間接的アプローチ』

リデルハートは二度にわたる世界大戦を経験し、戦争の方式に対する批判を独自の戦略理論へと発展させた。その戦略理論は「間接的アプローチ」として知られる。

それは、最終的には核戦争までも含めて、戦争目的を達成する上で、敵国との直接全面衝突を避け、敵国を間接的に無力・弱体化させて政治目的を達成し、味方の人的・物的損害を最小化するというミニマリズムの方法論である。

ここにおける特徴は、敵を撃滅するのではなく、敵国、敵国民に心理的動揺を引き起こし、その士気をくじいて麻痺させる「心理的領域」を重視している点にある。これは、新しい意味での「戦わずして勝つ」という戦略であり、『孫子』の兵法と重なる。