「宅急便」の生みの親である名経営者・小倉昌男から、直接の指導を受け「宅急便」等の開発に携わってきた著者が、ヤマト運輸の経営術を語る。
■理念を浸透させる
小倉昌男は、創業者である父親から社長を引き継ぎ、ヤマト運輸を単なる運送業者から、「宅急便」を基盤とするサービス業者へと、大きく生まれ変わらせた。「宅急便」開始から35年が経ち、小倉亡き後もヤマト運輸は成長を続ける事ができている。なぜか?
ヤマト運輸はすでに小倉昌男がトップにいた頃とは大きく異なった会社に変貌を遂げ、さらに進化を続けている。この変革の背景にあるのは「現場の力」である。ヤマト運輸では、新事業を含め、現場の社員一人ひとりの判断でお客様への提案を行う。それぞれが自発的に動き、新しいアイデアをプレゼンし、皆で議論を重ねる。そして形にしていくシステムを確立させ、成果をあげている。
会社は能力の高い、頭のいい社員ばかりを集めれば、成績が上向き成長していく訳ではない。集団が1つの目標に向けて、一致した思いを持てる事が一番大事なのだ。しかし、ただ経営者がやみくもに「理念」を掲げればいいというものではない。「DNA」のように個々の社員に浸透させる事ができて初めて、「理念」は社員の気持ちを結び付ける要となる。そして社員と共に会社も成長していくのだ。
■なぜ、ヤマト運輸は成長を続けられているのか?
1970年当時のヤマト運輸は、運輸業界の中でも二番手のグループに甘んじていた。荷物の取扱いは関東地方中心で、大口の配送だけ。会社そのものがいつ消えても、おかしくないような状況だった。
そんなヤマト運輸を一気に変えたのが、小倉昌男である。小倉は、1971年に創業者である父親から社長を引き継ぎ、ヤマト運輸を単なる運送業者から、「宅急便」を基盤とするサービス業者へと、大きく生まれ変わらせた。
ヤマト運輸が「宅急便」を始めたのは1976年。そこから35年経ち、小倉亡き後もヤマト運輸は進化し、成長を続ける事ができている。なぜか?
一つは小倉の理念を受け継ぎながらも、決してそれに甘んじる事なく、時代の変化に対応できるように、自分たち自身を積極的に変えてきたこと。もう一つは、社員が自発的に動き、一人ひとりが新しいアイデアを出して形にするという「組織の力」「集団の力」である。
著者 瀬戸 薫
1947年生まれ。ヤマトホールディングス会長 大学卒業後、大和運諭(現・ヤマト運輪)入社。二代目社長・小倉昌男のもとで「宅急便」の開発に携わり、徹底的に需要者の立場に立って考える小倉流経営哲学の薫陶を受ける。 地方の支店長を経て1987年に、本社営業推進部宅急便課長に就任。「クール宅急便」の開発を手がける。人事部労務課長、関西支社長など多様な職務を経験し、2003年に取締役人事部長、2006年、ヤマトホールディングス代表取締役社長、2011年より代表取締役会長。
TOPPOINT |
日経ビジネス Associe (アソシエ) 2013年 07月号 [雑誌] |
週刊 ダイヤモンド 2013年 6/8号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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まえがき | p.1 | 3分 | |
第1章 「伸び続ける集団」はこうして生まれた―「徹底的に考えること」から、すべてが始まる | p.15 | 19分 | |
第2章 小倉昌男に学ぶ「進化する経営」―私の運命を変えた「宅急便」との出合い | p.53 | 24分 | |
第3章 「社員の力」を生かし、伸ばせる組織とは?―革新的サービスを生み出すヤマトホールディングスの原動力 | p.99 | 25分 | |
第4章 どんな時代でも「大切にされる会社」の条件―これからを勝ち抜く「発想」と「戦略」 | p.147 | 21分 | |
第5章 「個を生かす集団」の仕事論―今、何を考え、どう動くかで人生が変わる! | p.187 | 17分 |
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良い本です
2013-09-16
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