ソーシャルデザインの事例
・廃棄ゴボウをお茶に変えて農家にも街にも貢献する「Growth」
青森県三沢市は、毎年15000tものゴボウを作る日本で1、2を争う産地である。規格外品の量も膨大で、その数は年3000t。この廃棄ゴボウを別の用途に使えないかと、試行錯誤の末、お湯を注ぐだけで香ばしいゴボウの香りがする「ゴボウのハーブティー」を完成させる。ゴボウ茶を製造販売する会社「Growth」がそれまでの商品開発事業と違ったのは、単なる利益追求ではなく「農家の収入を増やして跡継ぎを絶やさない」という社会的な目標を明確にしたこと。
・ホームレス問題と放置自転車問題を一挙に解決する女子大生「HUBchari」
「ホームレス、生活保護受給者」の増加と「放置自転車」の2つは、大阪で深刻な問題となっている。HUBchariが目指しているのは、この2つの問題を一挙に解決すること。ホームレスのおっちゃんの多くは、自転車で空き缶を集めているため、自転車が壊れたら、自分で修理するスキルを持っている。HUBchariは、有料のレンタルサイクルサービス。大阪市内10カ所に設置された「ポート」で自転車の貸し借りを行い、そこでは元ホームレスや生活保護受給者のおっちゃんたちが、自転車のメンテナンスや窓口業務を担当している。レンタル料は200円、月額980円の会員に登録する事も可能。
・島の内外を橋渡ししてコミュニティを活性化するメディア「離島経済新聞」
日本の島の数は6852島。離島と呼ばれる島々は6847島で、そのうち有人島は約430島にのぼる。離島では過疎化も進み、50年後には有人島の約1割から人が消えると言われる。一方で、離島にはそれぞれ独特の慣習や郷土食があり、島特有ののんびりした生活や島民の人柄は都会人の憧れでもある。そうした島の魅力と問題点に着目し、観光情報だけではない島の楽しみ方や情報交換の場を提供したいと作られたのが、ウェブマガジン「離島経済新聞」である。離島経済新聞では、島民や島出身者から記者を募り、情報を提供してもらっている。
・手話によるコミュニケーションをテクノロジーで効率化する「シュアール」
「シュアール」の「テルテルコンシェルジュ」というサービスでは、聴覚障害を持つ方がインターネット回線とiPadを利用して手話通訳者を呼び出す事ができる。これまで手話通訳は、聴覚障害者の隣に同席する事で提供されてきた。しかし、このサービスなら、場所に制限される事もなく、コストも安く利用できる。すでに六本木ヒルズなどの東京の大型ショッピング施設での試験導入が始まるなど広がりを見せている。月額19000円を導入企業が支払い、障害を持つ方々に利用してもらう。