真冬にも行列ができるかき氷専門店は、どのようにしてできたのか?
飲食店が繁盛するヒントが見つかる本です。
■リスクが大きいからこそ、先行者利益が生まれる
湘南に真冬でも行列ができる、かき氷屋さんがある。名前は「埜庵」。10年前に会社を辞めて「かき氷の店をやる!」と言った時、みんなに「バカじゃないの?」と言われ続けた。でも今、冬でも営業しているかき氷の専門店が何軒も出てきている。10年前に非常識だった事が、10年経つとそうでもなくなってきている。
冬のかき氷はリスクが高い。その代わり、競争相手が少ないという大きなメリットがあった。だからこそ、最初にいくと、大きな利益を手に入れる事ができる。
開店しても、最初から順風満帆だった訳ではない。当時の埜庵は、かき氷以外のものを売らないと生活できない。かき氷以外のものは売りたくないけど、売れてしまう状態に陥ってしまった。
「働けど、働けど暮らしは楽にならず」という最悪な状況は5年目まで続いた。2007年11月27日、かき氷の注文がゼロの日がやってくる。「かき氷のお店」だと自分で言っているのに、結局まわりの人はそういう風に思っていない事がわかった。出てきた答えは「やり方が間違っているんだ」。かき氷一本でやっていくと決めた。
■真冬のかき氷屋に行列ができた5つの理由
①3つのワンを極める
一般的に、人はどこにでもある平凡な存在よりも、他とは違う特別な存在に興味を持つ傾向がある。わかりやすい独自性の持たせ方は、3つのワンのいずれかを実行する事だ。
・ファーストワン(日本初、世界初、業界初)
・ナンバーワン(売上トップ、人気トップ、コンテスト優勝)
・オンリーワン(日本唯一、世界唯一、業界唯一)
②ストーリーで魅了する
埜庵がお客さんと特別な関係を築けたのは、店主がかき氷の物語を熱心に語り続けた事も大きい。物語の力は人の感情を動かす。つくった人のこだわりや開発秘話などを聞くと、それだけで人間の舌はおいしく感じられてしまうものだ。
③「自分だけが特別」だと思える接客がある
埜庵が繁盛店になったのは、一度来るとまた来たくなってしまう接客があるからだ。店主の会話の中で物語以上に多かったのが「グチ」だった。グチとは、要は自己開示だ。人は自己開示されると、その人に感情移入しやすい。閑古鳥が鳴いていた初期の冬の季節に来ていたお客さんたちは、どこか身内のような感覚を持っていた。
④メディアに消費されずにうまく付き合う
知る人ぞ知る名店だったのが、テレビに出すぎたために、一気にお客さんが来てオペレーションがぐちゃぐちゃになり、店の質が落ち、常連客も離れ、やがて廃業というパターンに陥る店は多い。埜庵は取材依頼が数多くあるにもかかわらず、出る回数を絞ってコントロールしている。だからこそ店が荒れる事も少ない。
⑤「つながり」が「つながり」を生む
埜庵が繁盛店になっていった理由はいろいろあるが、一度来たお客さんが別のお客さんを連れて来てくれたり、紹介してくれたりする事も大きい。埜庵は、なぜか人を紹介したくなる店なのだ。それは、あまりかき氷を食べた事がない人に「自分が最初に食べたあの衝撃を味あわせてあげたい」という思いがまずある。
著者 川上徹也
湘南ストーリーブランディング研究所 代表 大学卒業後、大手広告代理店に入社。営業局、クリエイティブ局を経て独立。 コピーライター&CMプランナーとして50社近くの企業の広告制作に携わる。東京コピーライターズクラブ新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴多数。 現在は、大企業だけでなく、小さな会社やお店がどうすればストーリーを発見し、成長していけるか、そのノウハウを個別のアドバイスや講演・執筆などにより提供している。
著者 石附 浩太郎1965年生まれ。かき氷屋「埜庵」・店主 大学で商品学を学んだ後、音響機器メーカーを経て、脱サラ。 2003年、通年営業のかき氷屋「埜庵」を鎌倉にオープンする。2005年、神奈川・鵠沼海岸に移転。 独創的なシロップを使ったかき氷を求めて日本全国からリピーターが訪れ、真冬でも行列ができるほどの人気店になっている。
帯 作家 山田 真哉 |
PRESIDENT (プレジデント) 2013年 7/29号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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まえがき | p.2 | 2分 | |
第1章 リスクが大きいからこそ、先行者利益が生まれる―繁盛法則・その1 | p.19 | 22分 | |
第2章 「おいしいものをつくれば、人は来る」という考えがドツボのはじまり―繁盛法則・その2 | p.63 | 12分 | |
第3章 お客さんの要望に応えるだけがニーズではない―繁盛法則・その3 | p.87 | 9分 | |
第4章 集客よりも、もっともっと大切なこと―繁盛法則・その4 | p.105 | 11分 | |
第5章 TwitterやFacebookは商売繁盛には役立たない―繁盛法則・その5 | p.127 | 9分 | |
第6章 効率的な商売に「伸びしろ」はない―繁盛法則・その6 | p.145 | 21分 | |
第7章 行列はゴールではなく、スタート―繁盛法則・その7 | p.187 | 25分 | |
エピローグ | p.238 | 5分 | |
あとがき | p.250 | 2分 |