「超」整理法などのベストセラーを持つ著者が、相手を一撃で説得する方法を紹介。イエス・キリストやシェークスピアなどの事例をもとに、説得のメカニズムを解説し、すぐに使えるノウハウを伝授しています。
■説得が成功するための条件
「超」説得法とは、瞬間的に相手の心を掴む方法である。「一撃で仕留める方法」と言ってもよい。説得や取引・交渉についての本は、必ずといっていいほど「あなたが提案している事は、相手の利益にもなる事を強調せよ」とアドバイスしている。しかし、どんな場合にもこうした条件が成立するとは限らない。
説得が成功するには、4つの場合がある。
①事態が変化する臨界状態の一歩手前まで来ている場合
②撃力(短時間の内に加える力)が用いられる場合
③説得が自己実現する場合
④説得者が信頼を獲得している場合
■一撃逆転のメカニズム
一般に、物事を判断する基準としては、複数のものがある。すべての証拠が一致してある結論を支持する事は滅多にない。相反する証拠があるのが普通だ。それらのうち、どれを重視すべきか? その重みづけが変われば、結論は変わる。
一見して客観的なランキングのように見えるものも、ウエイト付けは主観的な判断に基づくものである。しかし、この事は一般には十分に認識されていない。
説得とは相手の判断を変えさせる事であり、それは多くの場合に、評価の基準を変更させる事によって実現できる。相手が気付いていない基準を示したり、軽視している基準が実は重要なものだと指摘する。あるいは逆に、相手が重視している基準は、実はあまり重要でない事を指摘する。
■すぐに使える5つのアドバイス
①「あなたは能力があるのに、周りの人がそれを分かっていない」。これは、誰もが聞きたいと願っている究極の殺し文句だ。相手の関心を獲得するために、この一撃が有効。
②適切な命名やうまい比喩がないかと、常に探し求めよう。説得するにも攻撃するにも、名前や比喩は強力な弾丸になる。
③相手の決心を変えさせるには、評価尺度の正しさを争うのでなく、評価の基準を変えさせる方が有効。
④スピーチでは、話し始めに凝るより、最後の締めくくりを印象的に。
⑤「負の一撃」は致命的。とりわけ、最後の段階での負の一撃は取り戻せない。
著者 野口 悠紀雄
1940年生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授、一橋大学名誉教授 大蔵省時代から論壇に盛んに寄稿し、『情報の経済理論』では日経経済図書文化賞を受賞。一橋大学助教授時代に「『財政危機の構造』を中心として」でサントリー学芸賞受賞。1990年代以降に続いた長期不況に関して、その原因を戦時中に構築されたシステム(「1940年体制」)の非効率さにあるとして、経済論壇において一大センセーショナルを巻き起こした。
週刊 ダイヤモンド 2013年 5/11号 [雑誌] |
週刊 ダイヤモンド 2013年 6/1号 [雑誌] |
TOPPOINT |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.2 | 2分 | |
第1章 一撃で仕留めよ | p.15 | 21分 | |
第2章 魔女に学ぶ一撃説得の極意 | p.55 | 11分 | |
第3章 聖書をビジネス書として読む | p.75 | 14分 | |
第4章 最初の一撃で掌握するには | p.101 | 15分 | |
第5章 一撃のメカニズム | p.129 | 15分 | |
第6章 とどめの一撃 | p.157 | 14分 | |
第7章 うまく命名できれば千人力 | p.183 | 14分 | |
第8章 比喩を使う説得はなぜ強力なのか | p.209 | 11分 | |
第9章 撃力の理論――なぜ一撃か? | p.229 | 16分 | |
第10章 信頼獲得の正攻法とテクニック | p.259 | 13分 | |
第11章 悪魔の方法を盗めないか? | p.283 | 9分 |
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