戦略の時代 1980年代
アメリカ経済は1970年代の後半になると、二度のオイルショックをきっかけに低成長時代に突入する。市場全体の成長が止まった時、個々の企業が成長するには、競争相手からシェアを奪うしかない。そこで、競争相手に打ち勝つための戦略が重要な経営テーマになった。ポーターの『競争の戦略』とコトラーの『マーケティング原理』が登場したのは、同じ1980年である。
ポーターは、企業が新しい分野に参入してどれくらい儲かるのかは、どの分野に参入するかでほとんど決まってしまうという事を分析から導き出した。さらに、競争環境の中で自社の力量を客観的に把握すれば、とるべき戦略はたった3つのパターン(コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略)に集約されるという事を提起した。ポーターは、企業が採るべき戦略パターンをあたかも方程式で答えが出るかのように規定した事で、急速に受け入れられた。
コトラーもまたマーケティングをベースにして戦略のパターンを4つに分類した。
・マーケットリーダー:フルラインと同質化による全方位支配
・マーケットチャレンジャー:トップが真似できない大胆な差別化
・マーケットフォロワー:徹底的な低コストによる模倣追従
・マーケットニッチャー:特定の市場・製品への集中化
組織とリソースの時代 1990年代
1990年代には、ポーターやコトラーの戦略論が急速に受け入れられたがゆえに、「戦略のコモディティ化」という問題が生じてきた。ところが、同じような戦略を採用したとしても、実際には勝つ企業と負ける企業がある。その原因を探っていくと、組織の問題に行き着いた。
リソース・ベースド・ビューは、この時代に登場した新しい経営戦略の方法論で、企業の競争力の源泉はリソース(資金、技術、ブランド、チャネル、人材など)にあるという考え方である。1990年代半ば以降、企業の競争力に直結するような差別化の源泉は、結局は「人」と組織であるという認識が広がった。
リーダーシップの時代 2000年代
1990年代の後半から、有能なビジネスリーダーをいかに育てるかという事が重要な経営テーマとして浮上してきた。そして経営環境はかつてないほど激変し、変化のスピードが加速化した。こうした時代に、コッターは、マネジメントとリーダーシップを分離して、変革型リーダーシップの重要性を示した。変革型リーダーがリードする形で組織文化や行動様式を変革する「チェンジ・マネジメント」が2000年代の重要な経営テーマとなった。
2000年代後半以降、大多数の企業は「イノベーション」と「グローバル化」という2つの課題に直面している。それに伴い、経営戦略の文化というものを重要なファクターとして取りいれる試みが広がっている。