経営学は誕生から現在までどのような変遷を辿ってきたのか。ポーターやコトラー、ミンツバーグ、コッターなどが登場した時代背景や、学派の特徴を理解する事で、経営戦略の知識が深まる1冊。
■経営学の基礎の誕生 〜1930年代
経営学は「経営管理」として1900年前後、大規模工業が本格的に発展してきた時期に誕生した。今日の経営学の基礎は3つの研究によって築かれた。
①テイラー:工場の生産性を高めるため、作業工程を科学的に分析した
②ファヨール:合理的な経営をするため、会社組織の機能を体系化した
③メイヨー:生産性には労働者の心理的側面が大きく影響する事を発見した
■経営戦略論の誕生 1960年代
第二次大戦後、米国企業は好景気でどんどん発展していった。フォードの自動車、GEの電化製品など、当初作れば作るほど売れた。ところが製品が行き渡り国内市場が飽和するようになると、更なる成長のためにどういう新製品を開発するのが有利か、どの分野へ進出して新規事業を始めるべきなのか、というのが最も重要な経営課題となった。1960年代にPPM、SWOT分析、4Pなど様々な分析手法が開発され、近代的経営戦略論の基本的枠組みが整った。
■経営戦略の4つのパターン
経営戦略は2つの対立軸によって、4つのパターンに分類される。
「経営戦略は合理的に計画する事ができるのか」
①プランニング学派 (チャンドラー、アンゾフなど)
データと分析によって合理的な経営戦略をプランする事こそ経営の役割であるとする立場。プランニング学派は、有効な経営戦略を合理的に策定するための様々な手法やフレームワークを開発したが、この点でも経営学に大きな貢献を果たした。
②エマージェンス(創発)学派(ミンツバーグ)
現実的に有効な戦略というのは、現場で事業を運営・実行するミドルマネジャーが、様々な状況に直面するたびにその場で判断を行い、そうした判断に基づいたアクションを積み上げる事によってできあがるものだとする。
「どのような戦略が有効なのか」
③ポジショニング学派(ポーター、コトラーなど)
競争市場において自社のポジションをどう取るかという事が、自社にとって最も有効な戦略のパターンを決める鍵だとする。
④リソース・ベースド・ビュー学派(バーニー、プラハラードなど)
自社内部の経営資源に基づいてこそ模倣困難な戦略を策定できるとする。この立場からの研究は、究極の経営資源はヒトや組織に帰属するものであるという認識に到達し、リーダーシップを重視した経営戦略論に発展していった。
4つの戦略パターンとも現実の企業経営においてそれぞれに有効である。実際の経営者にとって有効な経営戦略というのは、これらの理論と手法が、重層的に活用されて策定され得るものである。
■現代日本の経営テーマ
2000年代に入ってクローズアップされた経営の大テーマは「グローバル化」と「イノベーション」である。その背後には大きな環境変化が3つある。
①BRICsの台頭
②先進国の社会構造の成熟化
③インターネットの爆発的な普及
イノベーションとグローバル化のプレッシャーの中で、これからの日本企業はどうやって発展していく事ができるのか。今の日本に必要なのは、日本的な良さ、日本の強さを維持しつつ、いかに新しい事業環境、競争条件に適合的な日本企業独自の「型」を作り上げていくかである。
年功序列を解消した上で、終身雇用(安心感がもたらすチームワークや継続的経験によって形成されるスキルの蓄積)やROEの低さ(長期的な競争力の形成に対する投資がしやすい)といった日本社会の文化に根ざした特徴を強みに転じていく事で「新・日本型経営」の強みは形成される。
著者 波頭 亮
1957年生まれ。経営コンサルタント 大学卒業後、マッキンゼー&カンパニー入社。1988年独立、経営コンサルティング会社株式会社XEEDを設立。幅広い分野における戦略系コンサルティングの第一人者として活躍を続ける。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊 東洋経済 2013年 6/15号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.3 | 3分 | |
I-1 マネジメントの誕生と戦略論への進化 | p.18 | 44分 | |
I-2 戦略論の体系:経営戦略の四つのパターン | p.95 | 17分 | |
II-1 現代の企業が直面している問題とは何か | p.126 | 4分 | |
II-2 イノベーション | p.133 | 14分 | |
II-3 グローバル化 | p.158 | 10分 | |
II-4 新・日本型経営 | p.176 | 15分 | |
おわりに | p.203 | 2分 |
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