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定量化できない品質

生産者にとっても消費者にとっても、定量化できるものは判断しやすい。我々は、性能などを数字で表す事によって、製品を簡単に説明できたつもりになる。しかし、車のスムーズなギアシフト、弦楽四重奏の生演奏の音など測定しようがない。

製品が真新しいうちは、生産者も消費者も性能に注目すれば物事は簡単に済むが、品質が高いというには長持ちしなければならず、製品寿命を通したパフォーマンスを考慮する必要がある。パフォーマンスには信頼性、耐久性、サービス性、メンテナンス性などの要素も含まれる。

さらに、パフォーマンスを定量化する難しさの一つは「多ければいい」というものではない事だ。技術が高度に進んだ今、我々は製品に「して欲しくないこと」も考えなければならない。パフォーマンスばかりに気を取られると、測る事のできない大事な品質を見過ごしがちになる。

軽視される、人と製品の適合性

工業製品は人の役に立つためにあり、人と製品の適合性は重要な問題だ。しかし、ものをつくる人は、製品の機能、コスト、外観、信頼性など他の事に気を取られて、十分な注意を向けていない。

人間の身体的、感覚的、認知的限界に合わせて製品をつくるには、人間という生き物を常に意識する努力が大事だ。大いなる創造性とユーザーテストを使って、工業製品が持つ誤使用の可能性や些細なマイナス影響を予測する事が必要である。

より良い品質は、善である

工業製品の全体品質が想像以上に悪い要因の1つは、品質に対する意識や注意が足りない事だ。もう1つの要因は、現代社会の生活のあり方にある。我々は、強い物欲とグローバル資本主義の時代に生きている。製品を買う人は日々の事で手一杯で、全体品質を確認する事などないだろう。品質に注目するのは、買った時よりも、むしろ壊れたり、その製品にがっかりさせられた時だ。

ものをつくる会社で働く人々は、いろいろな事に注意を奪われる。日程、短期利益、予算、勤務評価、設備、士気、競争。品質目標は測定可能な特性に集中し、それより具体性の低い問題が入り込む余地がない。全体品質もまた、向けられるべき注意や意識的な努力が向けられず、軽視されている可能性がある。

品質は多面的で複雑な問題だ。定量化する簡単な方法はなく、それを議論し意思疎通を図るための語彙が少ない。我々が製品の全体品質を評価する時は、論理的思考と感情的反応を組み合わせて行っているからだ。

人口や人々の欲求の増大を考えれば、つまらないものをつくり、壊れたから、飽きたから捨てるといった事が、もはや許されない状況にきている。高価であろうと安価であろうと、品質の高い製品をつくることが、個人のレベルでもグローバルなレベルでも、我々の問題の多くを解決する事になる。