医者であり、ハーバード大学メディカルスクールの特別研究員である著者が、いかに過去や常識にとらわれず、世界の見方を変えることが大切かを説く自己啓発書。


■深い思索と内省から発見と創造は生まれる
自分の世界観を変えるのは、人間にとって何より難しい事の1つだ。なぜなら、世界観こそ安定感と自信の源だからである。私達は、物事は自分の目に映る通りのものでしかないと思い込みがちだ。しかし、そう思い込んでしまうと、物事の奥深くに潜むものに出会っても気づかないという事になりかねない。

窮屈な精神的束縛から抜け出し、自分の中には普段目に見えているよりももっと多くの可能性が眠っている事を認めるのは難しい。しかし、そう認めれば、好奇心と発見意欲とが湧いてくる。

発見や創造は、深い思索と内省から生まれる事が多い。けれども思索にふけっていると、貴重な時間を無駄にしているという気がしてくる事もある。そうなると逆に頭の中が雑音で一杯になり、集中できなくなってしまう。発見や創造に導く思索・内省ができる「自分の箱の外」に居続けるには、真のコミットメントと粘り強さと根気が必要となる。

■思い込みにとらわれるな
誰の中にも「本質的な自分」がいる。「本質的な自分」がその人の人生にまばゆい光を投げかけると、人生はさらなる知恵と創造性とエネルギー、そして善意で満ちあふれる。しかし、私達は「本質的な自分」の姿がよく見えないまま生きている事が多い。様々な考えや根深い思い込みにとらわれているからだ。

「本質的な自分」の光に照らされていない時、心が発動しがちなのが「半分空の瓶」という思い込みである。大抵の人は、思い込みが自分をひどく苦しめている場合がある事に気づいていない。そういった人は、機能障害を引き起こし、自分を縛る思い込みを「真実」として受け入れるよう誘導される。

「半分空の瓶」としか見えないのは、ある瞬間の自分の関心が「空」の方だけに向いているからだ。そのため、同じ瓶に2通りの現実が成り立ちうる事に気づかない。半分空という現実と、半分まで一杯という現実だ。「半分空」という物の見方に染まった人は、どんな事にも決して100％満足する事がない。「半分空」という思い込みから生まれる思考習慣は悪循環を生み出し、ついには絶望感をもたらす。

思い込みのせいで機能障害に陥った人は、世界をあるがままに見る事ができない。見えるのは、自分の思い込みに基づき自分で作り上げた世界だけだ。

■信念こそが道を拓く
新たな地平を創造するためのキーワードが2つある。「信念」と「コミットメント」だ。新しい現実を創造できると心から信じてはじめて、私達はあらゆる不安と疑念に打ち勝つ事ができる。

私達に与えられた最大の課題は、次々と起こるありとあらゆる問題の解決に人生を費やしてしまわないこと。そして、新たな現実を作り出す覚悟を持つ事だ。新たな現実とは、過去からも、私達の演じている役からも、シナリオからも予測がつかないような現実を言う。

私達は人生に起こる混乱を「問題」とみなすのが得意だから、急いで問題を取り除こうとする。困難を「問題」としてではなく、「課題」としてとらえれば全く違うエネルギーが生まれ、希望と熱意を持って「課題」に近づけるだろう。

私達が持つとびきり貴重なリソースは「本質的な自分」が宿る場所にこそある。しかし、私達は普段、その場所の存在に気づいていない。魂を目覚めさせるには、意識の中のこのバーチャルな空間を現実の空間へと実体化しなくてはならない。その場所をつくるために、自分の魂の扉を開くためには、私達は人生に描きたい新たな地平を「絵空事だ」といった理屈や言い訳を排除しなければならない。妄信と言っていいほどの信念だけが、真の可能性への道筋を示してくれる。

著者 マリオ・アロンソ・ブッチ

ハーバード大学メディカルスクール 特別研究員 ニューヨーク科学アカデミーメンバー。消化器系をはじめとする執刀医として25年以上のキャリアをもつ。コミュニケーションと人間関係の人体に及ぼすメリットについての研究等で受賞歴がある。 ストレスが消化器系に与える悪影響についての研究から、脳の機能性に関する研究へとフィールドを広げる。卓越した話者でもあり、モチベーション、リーダーシップ、クリエイティビティについての研究成果がビジネスの世界で広く活用されている 。