儲かる農業を実践する著者が、日本の農家の実態と農業再生に必要なことは何かを語る。ばらまき政策によって、衰退していく農業をいかに成長産業に転換させるか、その方策を提言しています。
※『儲かる農業』
http://www.bookvinegar.jp/book/12135/
■「農」と「農業」は違う
日本の農業には「農」と「農業」が混在している。生産性が問われるものが「農業」、生産性など全く考慮になく作物を育てるだけのものが「農」である。一部の大規模農家、あるいはブランド力のある特定の作物を栽培している農家を除けば、圧倒的多数が生産性の伴わない「農」だと言っていい。
そうした家族経営の米農家の時給は、わずか100〜150円ほどである。それでも、彼らは先祖代々の農地を受け継ぐ事を最も重要な事と考えているために、農家を続けている。だから、生産性を高めようとか、効率を上げようといった発想は持たない。
日本には米農家が約160万世帯ある。その平均所得は500万円を超えている。家族経営の米農家の多くは兼業農家で、所得に占める農業外収入の割合は85〜90%。これに加えて、農業者戸別所得補償制度をはじめとする各種補助金が支払われている。このようにして、零細米農家が成り立っているのである。
■農業を経営する発想ができる人材の育成が大切
今、日本の農業に最も必要なのは、農業を経営する発想ができる人材の育成である。従来の個人農業の考え方ではなく、ビジネスとして「儲かる農業」を実践する考え方やノウハウを身に付けた人材を育てること。それが、日本の農業再生に必要不可欠な事である。
日本の農家の大半を占める兼業農家には「儲ける」という発想がない。だから、できる限り手間隙をかけずに、赤字にならない程度の収益があがれば御の字と考えている。なぜ農業を続けているのかと言えば、先祖伝来の土地を守りたいという思いと農地扱いになれば、土地の税金が安くなるからである。こうした兼業農家の多くは高齢化して、後継者もいない。
■農家出身者には期待できない
農家の小倅に期待する事はできない。全国を回って目にしてきた農家の小倅達を見る限り、自ら学ぼうとする者はごく少数派である。多くの小倅達の話題と言えば、女の話と遊びの話、生産技術の話などまず聞かない。そもそも、農業の話題を持ち出したら「そんなつまらない話はやめようぜ」と遮られてしまう。それが小倅の実態である。
農家出身者に期待できないのならば、外部から新しい血を引き入れるしかない。異業種の企業、農業に全く縁のないど素人こそが、これからの農業の担い手である。
■農家の世代交代を促進する政策を
日本の農業の競争力強化のためには、「農家の世代交代」が避けて通れない。日本では、65歳以上の高齢者が農業就業人口の61.6%を占めている。これは世界的にみても突出して多く、イタリアでは20%台、フランス、スペインは10%台である。特にフランスでは、農家の平均年齢は30代、さらに非農家出身者が約半分を占めるという。
フランスでは新規就農を優先し、高齢農業者の離農を促進するために、青年農業者に農園の経営移譲を行った場合、高齢農業者に対して補助金が交付されると共に、青年農業者に対しても就農交付金や低金利融資制度が実施されてきた。その結果、農業の若返りが進んでいる。
日本では逆に補助金を与えて高齢農業者を農業から離れられないような政策をとっている。こうした選挙目当てで将来のビジョンを無視した政策によって、日本の農業はどんどん高齢化が進み、新陳代謝が行われてこなかったのである。もう、ばらまき政策は終わりにして、農業の未来像を考えた政策をとらなければならない。
著者 嶋崎 秀樹
1959年生まれ。農業生産法人トップリバー 代表取締役 大学卒業後、北日本食品工業(現ブルボン)に入社。1988年ブルボンを退社し、佐久青果出荷組合に入社(後に社長就任)。2000年農業生産法人『トップリバー』を設立。9年で年商10億円の企業に育て上げる。
帯 元フェニックスリゾートCEO 丸山 康幸 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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プロローグ 『儲かる農業』を実現するための第一歩 | p.9 | 7分 | |
第1章 「ど素人集団」の農業革命その後―「儲かる農業」はいかに進化したか | p.21 | 17分 | |
第2章 「農」より「農業」―今求められる「儲かる農業」を支援する農業政策 | p.51 | 12分 | |
第3章 「儲かる農業」で地域活性―農業の復活が疲弊した地方を復興させる | p.73 | 13分 | |
第4章 「儲かる農業」教えます―農業を再生するためのトップリバーのノウハウ | p.97 | 15分 | |
第5章 「儲かる農家」と「儲からない農家」―農業復活のために必要な「儲かる思考」の農業経営者 | p.125 | 14分 | |
第6章 トップリバー卒業生はかく闘えり―独立した「ど素人」たちの現在と未来 | p.151 | 18分 | |
エピローグ 求む、同志! | p.183 | 4分 | |
あとがき | p.191 | 2分 |
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