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経営は理屈じゃない

「専門的なスキル」という代物は「いつでもどこでも使える標準化された能力」を志向している。だから、ビジネススクールのような場でトレーニングしやすい。ところが、経営は標準化されたスキルセットではなく、特定の文脈に埋め込まれた特殊解を見つけるという仕事だ。要するに、経営はサイエンスよりもアートに近い。

経営者や実務家はそれぞれの実践世界で何らかの「解くべき課題」に直面している。しかも課題の中身は1人ひとり違う。100通りの課題すべてに、こうすれば業績が上がりますよ、というような個別のソリューションなどある訳がない。

ビジネスの成功を事後的に説明しようとしても、学者の理屈で説明がつくのは、せいぜい2割程度だろう。現実のビジネスの成功失敗の8割方は「理屈では説明できないこと」で決まっている。

実務家にとって本当に有用なのは、結局のところ1人ひとりが自己の仕事の経験の中で練り上げていく野生の勘であり、研ぎ澄まされた嗅覚だ。しかし、それだからこそ経営学は経営の役に立つ。ビジネスの内2割の理屈がまるでわかっていない人は、「理屈じゃない」ものが本当のところ何なのかも実はわからない。「経営は理屈じゃない」という声に迫力を感じる実務家に限って、極めて論理的で理屈にこだわるのだ。ユニクロの柳井さんはその典型だ。

経営の論理化に意味がある

経営を相手にしている以上、法則定立は不可能だ。しかし、それでも経営の根幹を支える論理はある。経営の「論理化」は十分に可能だ。なぜ論理化が経営の役に立つのか。野生の勘は決定的に大切だが、その一方で、限界もある。けもの道を走りながら考えている人は、どうしても視界が狭くなり、視界が固定してしまう。そこで外に目を向ける必要が出てくる。

もちろん抽象論理だけでは経営できない。しかし、具体的な事象はあくまでも特定の文脈の中でのみ意味を持つため、他社の成功はそのまま応用できない。具体的事象をいったん論理化して初めて汎用的な知識ベースができる。それを自分の文脈で具体化する事によって、経営に役立てる事ができる。論理化と具体化を往復する事で、経営の本質が見えてくる。ここで大切な事は、思考の推進力はあくまでも論理化の方にあるという事だ。具体的な事象についての情報は、漫然としていても日常生活の中で入ってくるが、そこから意識的に論理を汲み取ろうとしなければ本質はつかめない。

経営学が役に立つかどうかは、使い手が経営学を正しく役立てられるかどうかにかかっている。手っ取り早い解決策を求める人は経営学に失望するだろう。しかし、経営という仕事を支える論理を手に入れようとする人には、経営学はきちんと応えてくれる。