米国大統領のために中・長期的予測を行う諮問機関「米国国家情報会議」が、発表した最新レポート。2030年の世界はどうなるかを予測し、わかりやすく解説しています。今後の国際情勢や経済のトレンドを知る上で参考となる1冊。
■4つの構造変化
2030年の世界の構造を決定づけるメガトレンドは4つある。この4つの流れは既に存在しているが、今後15〜20年でさらに顕在化し、数値でわかる形で世界を変化させていく。
①個人の力の拡大
貧困層が激減し、アジアを中心に10〜20億人もの新たな中間所得者が誕生する
②権力の拡散
アメリカを始め欧米各国の力が衰え、世界は「覇権国家ゼロ」状態に
③人口構成の変化
高齢化や若者の減少、移民や都市化が世界のあらゆる地域で進む
④食料・水・エネルギー問題の連鎖
怖いのは天候不調。シェール系燃料の開発でエネルギー不足は解消
■6つのゲーム・チェンジャー
国際社会が最近見せ始めている6つの傾向は、国際社会を「ゲーム」に例えた場合、その流れを大きく変えてしまう力を秘めている。
①危機を頻発する世界経済
新興国、特に中国・インドが世界経済の牽引役に。2025年、中国とインドの経済力を合わせると、その世界経済への貢献度は米国とユーロ経済圏を合わせた規模の約2倍にあたる見通し。但し、中国は緩やかに失速する。
西側先進国のほとんどの国が「頻発する経済危機」に対して強い抵抗力を持っているとは言えない。中でも特に不安なのが日本。急速な高齢化と人口の減少で、日本が長期的に経済成長を実現させる潜在力は極めて限定的。
②変化に乗り遅れる「国家の統治力」
ITの発達などにより国民の権利意識が向上、国家の統治力は衰える。人口構成が成熟期に入り、平均収入や教育水準が上がると、民衆は民主主義を求め、民主化の道を辿る。ただ、民主主義への移行期は政情が不安定になりがちで、2030年にこうした危険な状態にある国々はサハラ砂漠以南のアフリカやアジア、中東に集中。
③高まる「大国」衝突の可能性
人口構成の成熟化が進み、今後も国内紛争は減少傾向を続ける可能性は高い。一方で、国家間の紛争が勃発する可能性は高まっている。中国VSインド、米国VS中国が表面化する可能性もある。
④広がる地域紛争
中東と南アジアの2つの地域で起こる変化には、世界全体を不安定にさせる破壊力がある。崩壊の危機にある国家が集まるサハラ砂漠以南のアフリカ、中央アメリカやカリブ海地域などは、テロ集団や犯罪ネットワークが拠点を構える「無法地帯」化する危険性がある。
⑤最新技術の影響力
「情報技術」「機械化と生産技術」「資源管理技術」「医療技術」の4分野が今後の世界を大きく左右する。
⑥変わる米国の役割
米国は影響力が衰えるも「トップ集団の1位」に留まる。但し「米国の没落」の可能性もある。米国の不安要素は「医療制度の非効率」「中等教育の水準低下」「所得格差の拡大」。経済力が弱まる中で、現水準の軍事費を維持すべきか大きな争点となる。
こうした6つのゲーム・チェンジャー的要素と、4つのメガトレンドが絡み合い、お互いに影響し合いながら「2030年の世界」を形成していく事になる。
著者 米国国家情報会議
1979年設立。CIAや国防総省、司法省、国土安全保障委員会ほか、アメリカの各情報担当機関や著名大学の学者から提供された膨大な情報を元に、15~20年程度のスパンで世界情勢の予測を行う国家の諮問機関。 同会議がまとめた「国家情報評価」と呼ばれる指針は合衆国大統領が政策や決断のための参考にするなど、世界でもっとも精度の高い予測を行う機関である。
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![]() 土井 英司 |
![]() ジャーナリスト 立花 隆 |
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![]() 津田塾大学教授 萱野 稔人 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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まえがき | p.4 | 2分 | ![]() ![]() ![]() |
第1章 メガトレンド 「2030年の世界」を決める4つの構造変化 | p.13 | 34分 | ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
第2章 ゲーム・チェンジャー 世界の流れを変える6つの要素 | p.75 | 45分 | ![]() ![]() ![]() |
第3章 オルターナティブ・ワールド 「2030年」4つの異なる世界 | p.157 | 19分 | ![]() ![]() |