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2013/05/12更新

野心のすすめ (講談社現代新書)

140分

10P

  • 古典的
  • トレンドの
  • 売れ筋の
  • すぐ使える
  • 学術系
  • 感動する
  • ひらめきを助ける
  • 事例が豊富な

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屈辱感こそが野心の入口

健全な野心を持つための第一歩は「現状認識」だ。今の自分は果たして楽しい人生を送っているのか、楽しくないのか。自分に満足しているのか、満足していないのか。それを自覚するのは重要である。例えば、冴えない大学だから就職で差別されたとか、有名な会社に入れなかったから合コンでモテなかったとか。その屈辱感こそ野心の入口である。

「毎日がつまらない」「彼ができない」「バイト先でバカにされた」と思うなら、なぜだろうかとじっくり考えてみる。自分が少しでも不幸だと思うなら、その不幸が何なのかを突き詰めて考えると必ず答えが出てくるはずだ。

では「なんだかつまらない」のに、いくら考えても、自分が何をしたいのかわからない時はどうするか。「何をしたいのかさえわからない、自分の至らなさ」をまずは自覚する事である。

自分の残された時間を意識せよ

「欲のない自分」が、野心を持つにはどうすればよいか。野心を持つ事ができる人は、自分に与えられた時間はこれだけしかない、という考えが常に身に染み付いている。

最近の若い人を見ていて心配なのは、自分の将来を具体的に思い描く想像力に欠けているのではないかという事だ。時間の流れを見通す事ができないので、永遠に自分が20代のままだと思っている。「このまま一生ユニクロを着て、松屋で食べていればOKじゃん」という考え方では、40、50代になると惨めこの上ない。

人生を俯瞰で見るという事は、一生の儚さを知る事であり、自分に残されている時間をシビアに、かつ明確に意識する事でもある。どのように生きていくかという事を真剣に考えるのは、充実した人生を送るために不可欠である。

野心の幸福論

成功したい、モテたいと、欲望を叶えるために必死にもがき続けている事を不幸と呼べば、不幸かもしれない。仕事で挑戦すればするほど、あれこれ苦労したり落胆したりする事も増えるし、高望みの相手と付き合うほど、傷つく可能性も高い。

しかし、本当に恐ろしいのは「止まっている不幸」だ。望んでいた仕事に就けず、無力感のまま働く若い人が、資格を取るとか転職しようという努力も何もせず「こんなはずじゃなかった」と社会を恨む事しかできない。自分の欲望さえ把握できない人達は、何を目指して努力したらいいのかさえ見当がつかない。すると、一層の無力感に襲われ、ますます不幸の濃度が高まっていく。

それに比べると、何が欲しいかハッキリわかっている「走っている不幸」にはいつか出口が見えてくる。当選してたとえ失敗したとしても、世の中はほどほどの不幸とほどほどの幸福で成り立っていると達観する域にまで達する事ができれば、もはやそれは「不幸」ではない。